トランプ大統領はこのところプーチンに対する不満をあらわにしている。それは、特に、ロシアがウクライナの民生部門を標的として攻撃を加えていることについて向けられている。ウクライナはロシアに奪われた土地を取り戻すことが可能であるとも述べ、ロシアは戦争を止めるべきであったとも述べた。
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バイデン政権時とは異なる姿勢
第二次トランプ政権のウクライナ・ロシア戦争へのスタンスは、1月の政権発足以来、紆余曲折があるが、8月のアラスカでの米ロ首脳会談においてトランプがプーチンに妥協的な姿勢を示した後、9月下旬以降、トランプ政権は、ロシアに向けて厳しい姿勢を向けている。
一つには、ウクライナはロシアに奪われた土地を全て取り戻すことができるとのトランプの発言であり、もう一つは、ウクライナへのトマホークの供与検討である。
長射程のトマホークがウクライナに供与されれば、ウクライナはロシア領内の広範な地域に存在する目標を攻撃できるようになる。それに対して、プーチン大統領は「質的に新しいエスカレーションの段階」となるなどの牽制を行ってきている。
こうしたロシアの反応について、この解説記事は「ロシア・ウクライナ戦争に際してロシアが一貫して取ってきている戦術を繰り返している」と指摘するが、違和感がある。
なぜならば、今回のトマホークの供与検討に際してのロシアの反応が、昨年秋のATACMSの供与検討に際してのロシアの反応と同様のものとは到底思えないからだ。昨年秋のATACMSの供与検討に際して、ロシアがとったのは度重なる核威嚇であった。
ATACMSのロシア領内への発射が行われた後には、かねてより検討していた核ドクトリンの変更をも実施した。ところが、今回、ATACMSよりも長射程のトマホークの供与検討にはロシアは核の脅しを振りかざすことはしていない。同じ戦術を繰り返しているのではなく、昨年のバイデン政権への対応と、今年のトランプ政権への対応は明らかに異なっていると見るべきではないか。
