2025年11月8日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年10月27日

 トランプに対して核の威嚇を行えば、「倍返し」されて、相手を牽制するどころか、収拾がつかなくなるリスクがあることもあろうが、このようなロシアの対応の違いの背景に、トランプ政権のロシアに対する宥和的な姿勢に応える意味があることは明らかであろう。プーチンは、トランプに気を遣った、抑制した対応を行っているように思える。それは、バイデン政権の時にロシアが頻繁に発していた核の威嚇には、政治的な駆け引きの要素が強かったことをも示唆している。

トランプの考え

 一方、トランプの方は何を考えているのか。トランプは、9月のウクライナ領土奪還発言の背景を「ロシアは戦争長期化で経済が弱まっており、まるで張り子の虎だ」、「ウクライナとロシアの軍事的・経済的状況を知り、完全に理解した」などと説明していたが、トランプが突然に、ウクライナの領土の一体性の維持を重視するようになったとは思いがたい。

 トランプの対応は猫の目のように変わるが、変化しないものもあろう。取引相手として大国を重視する姿勢、プーチンとの関係を重視する姿勢、ウクライナの領土の一体性の維持を軽視する姿勢、ロシアによる国際法違反の武力行使への宥和的態度などは、変わらないのではないか。

 トマホークの供与の検討は、ウクライナに勝利をもたらすためではなく、ロシアを停戦に同意させるべく圧力をかける新たな手段として持ち出されていると思われるが、プーチンにとっては、それを受け入れることは、自らの政策目標の未達とともに、自らの弱みを見せることとなる。

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