2025年11月18日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年10月27日

 ワシントンポスト紙は、ロシアの警告はトランプ大統領にウクライナへのミサイル供与をさせないため、ロシア・ウクライナ戦争に際してロシアが一貫して取ってきている戦術を繰り返しているものであり、そうしたロシアの努力の一環である、と指摘する解説記事を10月8日付で掲載している。概要は次の通り。

(ZUMA Press/アフロ・dvids)

 ロシア外務省の最高幹部の一人は、10月8日、トランプ政権がロシア領深部の標的を攻撃できる長距離射程のトマホーク・ミサイルをウクライナに供与しないように警告を発した。

 この警告はトランプ大統領にウクライナへのミサイル供与をさせないため、先進的な軍事技術をウクライナに供与することはロシアと北大西洋条約機構(NATO)諸国との直接的な紛争を招くものであることを伝えて、ロシア・ウクライナ戦争に際してロシアが一貫して取ってきている戦術を繰り返しているものであり、そうしたロシアの努力の一環である。

 トランプ大統領が選出されて以来、ロシアは怒りの矛先を欧州の指導者に向ける一方、トランプ大統領に対しては一貫して前向きのコメントを行ってきた。トマホークの供与に関し、トランプ大統領は10月6日、「ほぼ決めた」と発言しつつ、ウクライナがどう使うか知りたいとも述べた。

 米国政府は、まだトマホークをウクライナに売却するとは言っていない。バイデン政権がウクライナに供与した長距離地対地ミサイル「ATACMS」が射程190マイルであるのに対し、トマホークは種類にもよるが、最大射程が1550マイルである。

 こうしたロシアからの警告は、トマホークの供与は戦場の力関係を変えることにはならないと指摘した10月2日のプーチン大統領の発言とは異なり、ウクライナがトマホークを得る可能性についての不安を示している。ウクライナは米国の人員なしでトマホークを発射することはできないため、プーチン大統領はトマホークの供与は「質的に新しいエスカレーションの段階」となると警告した。

 仮にトランプ大統領がトマホークのウクライナ供与にゴーサインを出す場合、その使用方法についてウクライナにどのような制限を課すかにもよるが、ロシア・ウクライナ戦争についてのトランプの政策の顕著な変更となる。トランプは、戦争を終わらせ、ロシアとの関係改善を図るのに、ロシアとウクライナの双方に停戦に合意するよう求めてきた。このトランプの要求にウクライナは前向きに対応してきたが、ロシアは常に身をかわそうとしてきた。


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