2025年12月5日(金)

都市vs地方 

2025年10月24日

 戦時中に生まれた現在80歳代の世代は多くの戦死者がいたことに加え空襲があったことを生活実感として知っている。この世代が集まると「自分達が死に絶えると戦後は本当に終わりだね」という話になる。

 しかし今の若者たちに戦争の悲惨さと平和の尊さを話すと「それはわかるけど日本を取り巻く安全保障環境が変わったのだから軍備は増強しなければ危険だ」という人が多い。高齢者にとっては戦争反対がリアルだが、若い世代にとっては安全保障環境の変化がリアルなのだ。

 戦争のリアルを知る高齢者は徐々に亡くなっていく。一方戦争のリアルを知らず安全保障環境の変化を強く意識する若者の有権者が増えている。

 こうして世論が変わってきたし有権者の投票行動も変わってきたからこそ、いわば当面の世論の主流に逆らうようにも感じられる公明党の今回の主張はかえって新鮮に感じられた。平和の党を強調していくのは公明党とって選択肢のひとつだ。

自由な発想でのキャスティングボートにも期待

 1960年代、高度経済成長時代の日本では住宅不足が深刻だった。大阪の千里ニュータウンを皮切りに各地でニュータウンの建設が進められた。しかし用地買収から土地の造成に至る、住宅建設の前の段階で長い年月を要して住宅不足はなかなか解消しなかった。

 東京都の66年度予算案には多摩ニュータウンを開発するための土地造成費予算35億円が入っていた。このとき公明党は「郊外のニュータウン建設は必要ではあるが、その前に東京23区内で都営住宅が絶対的に不足している。まずは都営住宅を早急に建設しないことには、多摩ニュータウンの造成は認められない」と住宅建設をアピールした。

 都議会で第1党を形成する自民党は予算に対する公明党の賛成を得るため、この主張を認めて23区で都営住宅建設を進めるまで多摩ニュータウンの土地造成予算は凍結することで合意し、予算を成立させた。その上で新年度が始まってからの補正予算で区部における1802戸の都営住宅建設を決定し多摩ニュータウンの土地造成費凍結を解除した。

 これを契機としてその後、半世紀以上にわたって、都議会では公明党はキャスティングボートを握ってきた。この経験と実績が26年前の国政における自民、公明の連立政権実現の伏線になった。

 東京都の『東京の土地』という統計によると、長い間7倍程度で推移していた勤労者の平均年収に対するマンション価格の倍率は約14倍に達している。バブルの89年(平成元年)ころにも12倍程度だったから異常な高騰である。

 もともと住宅政策を得意とする公明党にとってはこの種の課題を取り上げていくのもひとつの道だと思う。連立の呪縛から放たれて本来の公明党らしい自由な発想を期待したい。

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