日本は過去半世紀、世界の中で幸せな国だったと思う。しかし、それに慣れすぎて「ゆでガエル」状態になってしまった。繰り返されるバラマキもその一つだ。トランプ的言い方をするならば、この状態を断ち切るには、もはや財政破綻という衝撃を経験するしかないのではないか。
もちろん、財政破綻は強烈な痛みと代償を伴う。だが、これ以上「ゆでガエル」を続けるよりはそのほうがキズが少なくてすむと思う。
今夏の参院選で各政党とも、選挙公約として「物価高対策」を名目とした補助金や減税といった票目当ての政策を掲げた。
自民党は国民一人当たり2万円の配布などで、総額は約3兆円あまりという。野党が対抗して掲げた消費税減税は、食料品が対象なら5兆円、税率を5%に引き下げるなら10兆円規模の減収になる。本来は財源や効果についてよほどつっこんだ議論が必要な規模だ。その後に行われた自民党総裁選においても新総裁に選ばれた高市早苗氏を含め、同様の票目当ての政策競争が行われた。
一連のバラマキのはじまりは、コロナ禍での特別定額給付金だ。全国民に一律10万円が支給され、総額は約12兆8800億円。加えて、中小企業や個人事業主向けの持続化給付金や雇用調整助成金などもあった。
コロナ禍対策として有効なものはあったが、これでタガが外れた状態になった。その後毎年、3兆円、5兆円といった規模でバラマキが繰り返され、今に至っている。名目は物価高対策や子育て支援などだ。コロナ禍以降でも累計数十兆円に及ぶこれらの財政出動がどれほどの効果を上げたのか、あるいは課題を残したかという「検証」は政府としては全く行っていない。のみならず、メディアからも国民からも検証を求める声は滅多に聞かない。
