2025年12月6日(土)

Wedge OPINION

2025年10月22日

 余談ながら、30年間、仮に2%の金利がつけば、その間の預金金利収入は、ざっと500兆円ほどになったと思われる。ゼロ金利の成果が見えにくい一方で、国民はかなり〝損した〟ことになる。

日本にはびこる
ゼロ検証の歴史

 そういった大きな流れとは別に、国会、政府の財政運営上の問題もある。それは「予算偏重」になっていることだ。企業であれば発生主義と複式簿記の会計で事業ごとに進捗管理をする。そして、事業年度末から3カ月以内に「決算」をまとめ、公表する。

 ところが国の会計では企業会計方式は採用しておらず、予算項目と事業項目も一致していないなどのため、決算のとりまとめに時間がかかる。その後、会計検査院の検査期間を経て国会での決算審査が翌々年になる。

 例えば、2023(令和5)年度の決算報告は、24(令和6)年11月に内閣から国会へ提出された。そのため、国会の予算委員会はテレビ報道もされて花形である一方、政府の事業の執行状況や成果を審査する「決算委員会」は、政治家もメディアもほとんど関心を示さない。その存在すら知らないという国民も多いらしい。つまり、政府がつけた予算の成果を検証する体制ができていないということだ。

 少子化対策を例に見てみよう。少子化対策が登場したのは今から30年も前だ。1994年に「エンゼルプラン」として始まり、2003年の「少子化対策基本法」から本格化した。それからでも20年がたつ。岸田文雄政権(当時)が「異次元の少子化対策」を掲げて以降は毎年3〜4兆円の予算が投じられている。これだけ長期間続けられても少子化は進んでいる。「対策をしなければ、もっと進んでいた」という意見があったとしても、目に見える改善効果がないのは明らかだ。

 20年、30年と続けていて効果が見られない政策の根本からの検証が行われていないのは冒頭に述べた「ゆでガエル」状態を顕著に示していると思う。

 同じようなことがいたるところで見られる。防衛費の倍増も、安全保障にどのような効果があるのか具体的な説明はなされていない。最新鋭の戦闘機や護衛艦を整備しても、ミサイルや弾薬の継続的な供給態勢はないという指摘がある。それではすぐに継戦能力を失う。

 スーパーコンピューターのような鳴り物入りの国家プロジェクトの失敗も検証がない。スパコン「京」は毎年の運用維持費を含めて2000億円規模の予算が投じられた。当初、文部科学省は「経済効果7兆円」と謳っていたが、何ら検証されないまま7年間の運用後にスクラップになった。

 後継の「富岳」も同様の結果となる恐れは十分ある。メディアは世界一のスピードが出た時は報道するが、国民の税金をムダなく使っているかには関心を示さない。オリンピックで金メダルをとったときのノリなのだ。

 冒頭、日本は財政破綻するしかないのではないかと述べた。借金は返さないといけないというのは経済の鉄則であり、バラマキを続ければ破綻は現実に起きる。絶対に潰れることはないとさえいわれた日本国有鉄道(国鉄)は破綻し、1987年に民営化された。2007年には北海道夕張市も破綻し、日本で初めて財政再建団体に指定された。

 だが、それでも財政破綻は避けたい。また、仮に破綻した場合、その後どうするかという問題も考えておかないといけない。


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