2026年2月11日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年10月30日

 このどちらの見方を取るかで対応は異なる。もしロシアが抑止され戦争に至らない対応をしているのなら、NATO諸国が強い反応をするのは間違いで、NATO領域侵犯ロシア機の撃墜は不要で危険な緊張激化になる。もう一つの見方では、西側が強力な反応をしなければ、西側の一体性が崩れ、弱小国はいずれ孤立し攻撃され得る。

 どちらの見方も間違いかもしれない。最大のリスクはロシアの無謀なグレーゾーン戦術が偶発的紛争を起こすことだ。

 貨物機への妨害行為や放火が多数の死傷者をもたらしたらどうか。DHL貨物は商用機も輸送している。ロシアの妨害行為で商用機が欧州で墜落し乗客数百人が死亡すれば戦争行為と見なされるだろう。

 プーチンは、それでも「不幸な事故」との説明を欧州が受容すると思うかもしれない。従って、現在のロシアの行為には、ハイブリッド戦にはコストが伴うことを明確にするが、直接戦闘には至らない対応が必要だ。

 ロシアのハイブリッド戦への最良の反応は、西側のグレーゾーン戦術だ。米英仏にはサイバー攻撃能力があり、その能力保有には理由があるはずだ。

* * *

グレーゾーン行動にすべき対応

 まず、グレーゾーン行動とは、武力による反撃を正当化する自衛権の行使のための条件を満たさない形の威嚇行為のことを言う。自衛権行使で応じるには、対象となる相手方の行為が、武力攻撃、すなわち「組織的計画的実力の行使」である必要があり、仮に軍艦が大砲を打ちながら尖閣諸島の領海に侵入してくれば、これは明らかに日本に対する武力攻撃で、自衛隊が実力でこれを排除するのは自衛権の行使として正当化される。一方、仮に武装漁民を乗せた漁船が大挙して尖閣諸島領海に押しよせ上陸しても、これを組織的計画的実力の行使と見なせるかには議論がある。

 一方、そのような武装漁民の行為は、我が国の領海・領土への明白な侵犯で、領土主権への重大な侵害であり、国内法に基づく違法行為であることは明確である。従って、これに対し国内法に基づき適切な是正措置をとることは、国家主権の行使として正当化される。


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