国内治安維持に責任を有する海上保安庁と警察が武装漁民の上陸を妨げ、逮捕、場合によっては発砲等、必要に応じて、国内法上正当化される実力の行使を行うことは当然可能である。従って、それを前提として平時から能力向上に努めると共に、上陸の可能性があるのなら、それに対応するために予め法執行関係者が尖閣諸島に物理的プレゼンス(以前は尖閣諸島には、羽毛採取や鰹節加工等のために数百人の定住者が存在)を維持する等の対策を考えておく必要がある。これらの点は欧州におけるロシアのグレーゾーン行動についても同様である。
次に、グレーゾーン戦への対応は、通常、中国の東シナ海、南シナ海における行動との関係で論じられるが、それが、欧州でロシアの威嚇行動との関係で議論されること自体は良いことだ。アジア諸国と欧州諸国が今まで以上に課題を共有し、今後双方で具体的対応を議論する土俵ができるからだ。
日本ではなかなか具体的対応まで議論が進まないが、ロシアの行動は欧州にとっては放置出来ない課題である。欧州の議論の動向や具体的対応は、中国の今後の対応に直接影響を及ぼすので、欧州における議論には、日本も緊密に参加し問題意識を共有することが必要だろう。
西側がすべき「一定の対応」
最後に、この論説が指摘する2つの見方は、どちらかが正しくもう片方が間違いということではなく、両方の要素があるということではないか。ロシアにしてみれば、長距離ミサイル供与を含む西側の対ウクライナ支援を抑止すべく、何らかの行動を取ることが必要で、仮にそれへの欧州の反応が分断されていることが分かれば、それに乗じて、さらに対応を激化させる可能性(例えば、親欧州連合(EU)を明確にしたモルドバに対しウクライナ戦争を始めたのと同様に、同国内の親ロ派支援を口実に攻撃を仕掛ける等)も視野に入ってくる。
従って、西側は、ロシアによる挑発行為に対し一定の対応をとるべきだろう。一方、ロシアはNATO諸国との直接戦闘は意図していないと思われ、モルドバ、ジョージアは危険だが、エストニア、ポーランドには通常戦争の危険は少ないと思われる。
