2025年12月7日(日)

未来を拓く貧困対策

2025年10月30日

施設運営を通して「共生」の社会を描く

 千葉県習志野市に2023年3月に開設された「実籾パークサイド」は、児童養護施設、高齢者施設、障害者支援施設などを一体的に整備した複合型福祉施設である。広さは約6105平方メートル、小学校の校庭一面ほどの敷地に、多くの施設が点在している。

実籾パークサイドの全貌 ©FUKUSHI-GAKUDAN

 施設内には、児童福祉法、障害者総合支援法、介護保険法に基づく社会福祉施設などがある。これに加えて、運営主体である社会福祉法人「福祉楽団」が制度外で独自に整備した「大人になっても泊まりにこられる部屋」や「だれでも使えるバスケットコート」が整備されている。

 図表1は、施設名、根拠法と施設概要を示したものである。これらの施設の整備は、25年3月のオープンに向けて、一度に整備が進められた。一法人が取り組む事業としては、異例の展開である。

施設名 根拠法 施設概要 写真を拡大

困難を極めた施設の整備

 社会福祉関係者や公務員にはよく知られたことだが、根拠となる法律が違う複数の社会福祉施設を建設するのは困難を伴う。児童、高齢者、障害者と自治体の窓口は別々に設けられ、それぞれの担当者が担当する法律に基づいて許認可の判断をする。基本的には、相互の窓口担当者が連携をすることはない。

 求められる建築基準も異なり、申請書の様式も違う。1つの施設をつくるだけでも苦労は少なくない。それを同時並行で進めたのである。

飯田大輔理事長

 中心となった社会福祉法人福祉楽団理事長の飯田大輔さん(47歳)は、苦労したのは福祉部門の窓口の調整だけではないという。

 「敷地の一部約100平米に公有地が含まれており、行政から払い下げを受ける必要がありました。行政も面倒な払い下げの手続きには慎重で、労力がかかりました。さらに、この敷地のほとんどが遊休農地で、農業振興区域だったため、農用地区域からの除外という複雑な手続きが必要でした。その手続きだけで1年以上かかりました。都市計画、農業、子ども福祉、高齢者福祉、教育委員会などなど、県庁や市役所のさまざまな部署を行き来しながら事業を進めてきました」

 苦労は役所との調整だけではない。飯田さんは、「物価高騰のあおりをうけ、建築費用が膨らんだことも悩みの一つ」という。

 「総事業費はざっと22億円。そのうち補助金は5億円ほどですが、建築費にかかる消費税だけで約2億円になります。公益的な社会福祉施設の整備には、補助金の仕組みを見直すか、消費税の課税の仕方をしっかり検討してほしいです」


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