他方、さらに進んで、ASEANや東ティモールが積極的に米側に付くことは、ASEANの非同盟原則や東ティモールの貿易・投資面での中国への依存から期待することはできないであろう。そして、トランプは、対中関係については適当なところで手を打って、超大国の勢力圏の相互尊重のディールを行うことが懸念されており、この記事では、もしそうなれば、東ティモールについての関心も無くなり、同国に対する中国の影響力の拡大を傍観することになるとの警鐘を鳴らしている。東ティモールが中国の拠点国になるようなことは、地域の安全保障上の深刻な問題となり、何としても避けるべきであろう。
日本がすべき経済的支援
以上のようなこの記事の分析は概ね妥当であるが、より重要なのは、東ティモールのASEAN加盟を契機にさらに影響力を高めようとする中国へのさらなる経済面での依存を防ぐことであり、そこには日本が果たす役割がある点であろう。
日本は、東ティモールの独立後国連平和維持活動(PKO)に積極的に参加し平和の構築に貢献し、政府開発援助(ODA)を通じて社会経済開発に地道に努力を重ねてきており、現在の政治指導者レベルではこの点は良く認識されている。日本は、このような過去の遺産を有効に活用し、この機会に、官民の東ティモールへの支援を格段に強化するべきではないかと思われる。
特に、人材育成面での留学生、研修生、技能実習生の受け入れを大幅に拡大し、また、インフラの整備、農業の振興、教育や貧困対策などの支援を強化すべきである。先方の援助吸収力にも限界があることに留意する必要はあるが、人口140万の小さな国に対する援助効果は高いはずである。
また、東ティモールのASEAN加盟は、貿易面での活性化や投資環境の面での改善を意味し、民間セクターにとってもビジネスチャンスがあるはずである。多くの中国企業が既に現地に進出しており、韓国は労働者受け入れ制度で東ティモールに重点を置いており、ビジネス面ではいずれも日本に先んじている。
