ローウィ研究所(豪州)のローランド・ラジャが、ベトナムのトランプ関税の合意がアジアの供給網に及ぼす意味を、2025年7月3日付の同研究所サイトで論じている。
ベトナムは「相互関税」が発動される前にトランプ政権との貿易取引を達成した最初の国となった。もし、取引が成らず46%の関税を課せられることになれば、その経済が米国への輸出に大きく依存するベトナムは最も大きな被害を受ける国の一つとなる。
トランプはベトナムに対する関税は46%ではなく20%になると言っている。しかし、中国狙いとみられるが、「積み替え輸出」の物品には40%が課せられる。
トランプ政権は、中国が米国への迂回輸出にベトナムを使っていると言っている。見返りに、ベトナムは米国に対する関税をゼロとする。これはトランプが4月2日に「相互関税」を公表した直後にベトナムが申し出ていたことである。
ベトナムの輸出企業は20%の関税を不満に思うであろう。しかし、46%からの引き下げはベトナムにとってかなり良い結果だと思われる。
これは基本税率(一律関税)の10%よりも10%高いだけである。タイやインド等の競争相手がベトナムを大きく下回る関税を得られる余地は大きくない。また、ベトナムの製造業には十分な競争力があるので、主要な競争相手に対する関税よりも多少高くなっても、十分巧くやっていけるであろう。
他の重要な比較は中国である。現在、中国は平均で50%超の関税に当面している。トランプはベトナムに対する関税を20%に引き下げたので、ベトナムは関税上の優位性を得たことになる。
それ故、ベトナムとの取引は、中国とのデカップリングで、サプライチェーンと輸入先がベトナムのような国にシフトすることを、トランプ政権が受け入れることの合図かもしれない。中国との緊張は今やさらに悪化し、サプライチェーンは引き続きベトナムに向けて移動し、ベトナムに大きな利益をもたらすことになり得よう。
