カリブ海における海軍の増強は薬物の阻止を超える何等かの狙いがあることを示唆する。少なくとも3隻が集結するミサイル駆逐艦は、トマホークを発射する能力を備えており、遠くベネズエラ内部のコカイン製造施設あるいはカルテルの司令部を攻撃することが出来できる。ペンタゴンはまた、プエルトリコに10機のF35を派遣している。
トランプ政権にはマドゥロを追放したい少なくとも二つの理由がある。世間で注目されているのは薬物の密輸である。しかし、それは軍事侵略の根拠としては弱い。
ベネズエラに対する軍事力行使の第二の擁護論は、薬物密輸によって財政的に支えられているマドゥロの軍事的独裁は革命を輸出しているというものである。押し寄せる移民の波はそれ自体が攪乱的であるが、そこに組織犯罪の分子が含まれるとなると、リスクは一層高まる。2025年1月の米連邦捜査局(FBI)の報告は米国と米国の法執行当局に対する危険を描いている。
トランプはカラカスとの外交関係を断った。彼の法律チームは、カルテルは米国国民に対する脅威となっているのでトランプにはマドゥロに対して戦争を仕掛ける権限があると論じていると伝えられる。
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プエルトリコの海軍基地を再生
プエルトリコの海軍基地「ローズベルト・ローズ」は過去20年放置されて来た。しかるに、過去1ヶカ月、空軍は管制塔や老朽化したインフラを整備し、輸送機が装備品と補給品を運び込んだ。今や、ジェット戦闘機の轟音が轟くという。
米国はこの基地をラテンアメリカの薬物ギャングに対する戦争拡大の拠点として再生させている。8月以降、海軍艦隊(駆逐艦3隻、ミサイル巡洋艦1隻、攻撃型原潜1隻、強襲揚陸艦数隻)がベネズエラ沖合に集結している。
また、F35戦闘機、MQ-9 リーパー無人攻撃機や偵察機が近隣の空軍基地に配備されている由である。9月2日以降10月14日までに5回にわたり密輸船とされるボートが攻撃され、乗組みの27人が殺害された。
トランプは就任の日の1月20日に大統領令に署名し、西半球に焦点を当て、国際的な薬物カルテルその他の犯罪組織を外国テロ組織に指定すべしと命じ、これら組織は米国の安全を脅かすものとして完全に除去することが米国の政策であると宣言したことがある。この中には、ベネズエラの犯罪組織Tren de Araguaへの言及もある。大統領令は、これら組織が西半球の政権に浸透し結託している事情がある、としている。
カリブ海に米軍が築いた軍事的態勢は薬物流入阻止のためだけとすれば大袈裟に過ぎる。散発的にボートを沈めても、その効果は限られる。密輸組織が取り締まりをかいくぐる手段が巧妙になっていることは広く指摘されている。
