「OZOPSの商品が技術見本のような役割として、取引先を広げる機会になった。また、商品を売ろうと、小売店への営業や展示会へ出展するようになり、そこで新たな仕事の話へとつながることも増えていった」
こうしたメーカーからの受託開発・製造は「OEM」と呼ばれ、収益単価は2次下請けの3~5倍にもなるという。「最終商品を作ることになるので、見た目も含め一つひとつの商品精度も高いものが求められるが、その分、技術を磨くことにもつながる」と小沢代表は話す。
海外展開の契機にも
自社ブランドの確立が海外展開へとつながることもある。
東京都荒川区で1946年に創業した渡邉製本は、学術書を中心に出版社からの仕事を受けていたが、紙媒体の衰退により受注が減りつつあった。新たな売上を立てようと、2009年に自社のホームページ(HP)を立ち上げることにした。
「他の製本会社のHPを見ると、大規模な工場の写真や1日何万冊も作れることを宣伝しているものが多くて、太刀打ちできないと感じた。うちの特徴とも言える特殊製本を発信していく形にしようと思った」。渡邉浩一代表取締役は振り返る。
同社は、厚さ7センチの特厚本やB4横サイズの特大本、背表紙を除く三方の色塗り、ページが180度開くコデックス装といった特殊な製本を機械加工と手作業によって実現していた。こうした事例を定期的に、ブログで紹介していった。
HP開設から1~2年ほど経過し、「全国の印刷会社から見積もりの依頼が来るようになった。顧客のカラーが変わっていった」(渡邉代表)。初めてやる形式もあったが、それが成功しても失敗してもノウハウとして蓄積された。受ける仕事はこれまでよりも利幅も大きいものだった。
新たな売上も立てられるようになってきたが、出版不況のあおりは大きく「もう1本売上の柱が欲しい」と渡邉代表は感じた。自社製品を開発することを決めた。
そこで思い出したのがHP開設の翌年に受けた米国ロサンゼルスの文具ショップメーカーから受けた仕事だった。
