2025年12月6日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年11月10日

 ルクオイルとロスネフチはロシアの原油輸出の約半分を占めており、今日、ウクライナによるロシア領内のエネルギー施設への攻撃でロシアのエネルギー収入はすでに2割程度減少しているとみられることと併せ、ロシアにとって相当に厳しい措置になることは間違いないだろう。

 第二に、今回の措置は、欧州北大西洋条約機構(NATO)諸国や欧州連合(EU)による制裁措置と同時に科されたことで、より効果的な制裁となったことも重要である。

 EUは、米国が今回の制裁を発表したのと同じ22日、第19次対露制裁パッケージを発表した(英国はすでに10月15日に上記両社を含む制裁拡大を発表)。同パッケージにはロスネフチとの取引の全面禁止が含まれているほか、ルクオイルについてもその子会社を制裁対象にしており、ロシアの石油輸出に対してより効果的な制約となることが期待される。

 さらに同じ22日、スウェーデンのクリスターソン首相は同地を訪問したゼレンスキー大統領との間で、同国の最新型戦闘機グリペンJAS39-Eを最大150機までウクライナに輸出する旨の「意図表明文書」に署名した。JAS39-EはAIを戦闘支援の中核的要素とする設計思想で製造されており、電子戦にも優れた能力を発揮する。このような機体を最大150機納入し運用することができれば、制空能力をはじめウクライナ空軍の能力は各段に向上し、質的に新たな段階に達することになるだろう。

 ただ、スウェーデン側によれば本機の納入は、最低でもあと3年待つ必要があるとされている。それでも、ウクライナ空軍力の質的転換に対し欧州が具体的な形で支援の意思を表明したことは、米国による制裁発表と相俟って、ロシア側に対する牽制として重要な意味をもつと思われる。

ロシア側も攻撃力を誇示

 一方で、ロシアは10月22日、「ヤルス」戦略弾道ミサイル、Tu-95戦略爆撃機搭載の巡航ミサイル、「シネヴァ」潜水艦発射弾道ミサイルの発射訓練を実施し、いわゆる「核の3本柱」を誇示した。さらに10月26日、ロシアは10月21日に新型の巡航ミサイル「ブレヴェストニク(Burevestnik)」の発射実験を「成功裏に」行ったと発表した。露側説明によれば、同ミサイルは原子力推進型でほぼ無限の射程距離をもち、ミサイルおよび防空システムを迂回する高い能力を示したとされている。

 露側説明の通りであれば、本ミサイルは欧州のみならず米国本土の標的にも到達可能となる。本発表には当然、ウクライナへの米欧の支援に対する牽制としての意味合いがある。

空爆と制裁▶Amazon
Facebookでフォロー Xでフォロー メルマガに登録
▲「Wedge ONLINE」の新着記事などをお届けしています。

新着記事

»もっと見る