2025年12月6日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年11月13日

 チャーリー・カークを撃ったロビンソンもビデオの世界で過激化した。多くの若者がネットゲーム内で過激な言説に触れ、「レッドピル(覚醒)」思想に傾倒し、1月6日の議事堂襲撃にも関与した。ネット空間と現実社会が地続きになり、暴力的行動を促す。

 インターネットが、ポピュリズムや陰謀思考の台頭のタイミングの説明となる。今や、米の民主、共和両党は、二つの全く違う情報空間に住んでいる。リベラルな民主主義が歴史上これほど成功を収めてきた時代に、我々がそのリベラルな民主主義の存立をかけた闘いをやっていかねばならないことを説明できるのは、インターネットの台頭だけである。

* * *

民主主義の危機を呼ぶ3つの要因

 刺激的で、説得的な記事である。思考過程も興味深い。フクヤマは、これまでの議論を9の原因論に整理して、世界は総じて悪くはなっておらず、また人間の本性は基本的に変わらないのにもかかわらず、ポピュリズムの台頭が何故2010年代の中頃から起きているのかと問い「その後10年近く考え続けた結果、技術の変化、特にインターネットこそが、何故この時代に、この形でポピュリズムが起きたのかを最もよく説明するとの結論に至った」と述べる。

 フクヤマが指摘する次の二点も、印象的だ。第一は、インターネットは「情報の仲介者(新聞、出版社、テレビ局など)を排除し、誰もが発信者になれる世界を作った。かつては一定の「事実確認」や編集基準があったが、それがなくなり、「いいね」や「シェア」の数が真実性の代わりとなった。大手プラットフォームは、商業的利益のために煽情的で、対立を煽る内容を優先し、アルゴリズムは利用者の興味を最大化する方向に働く」、「オンラインでは極端な見方や素材が拡大する。インターネット世界の通貨(カレンシー)は、アテンション(注目)であり、冷静、熟慮、知識や正義では注目されない」との指摘だ。

 第二は、「リベラルな民主主義が歴史上これほど成功を収めてきた時代に、我々がそのリベラルな民主主義の存立をかけた闘いをやっていかねばならないことを説明できるのは、インターネットの台頭だけである」との指摘だ。何れも鋭い洞察と言う他ない。


新着記事

»もっと見る