2025年12月11日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年11月18日

 次いで、台湾の位置づけに関する米国の立ち場について言及しておこう。この記事が言うように、米国政府は、台湾が中国の一部であるという中国政府の立場を 「recognize」している。この「recognize」というのは非常に微妙な言葉で、合意はしていないのだが、日中共同声明に言う、(台湾が中国の一部であるという)中国政府の立場を「十分理解し、尊重する」とどちらが「自由度」が高いのであろうか。「recognize」の日本語訳を「承認する」とすると、日本語のニュアンスとしては、理解と尊重より中国側の立場を認めている度合いが強いようにも聞こえる。

 なお、台湾有事発生に当たっては、中国は即座に「これは中国の国内問題で、国際社会の干渉は内政不干渉の原則に反する」と言ってくるであろう。問題は、国際社会が、これにどのように反論するかである。

日本の意思表明による効果

 日本は、台湾が中国の一部であるとの中国政府の立場を「認めた」ことは無いので(これは、中華人民共和国政府が中国を代表する唯一の政府であることを「承認する」との言及と比べれば明白である)、客観的に国家としての要素を備える台湾を武力により併合すれば、これは、明確な国際法違反であり、「ロシアのウクライナ侵攻と何ら異ならない」と言い切れるかどうかだ。日本の立場からはこれを言い切れると思うし、それを国際相場とするために平時から同志国とこの点をすり合わせておくことが望ましい。

 なお、一旦台湾を国家として認めれば後戻りはできないので、日中共同宣言の依って立つ基盤が崩壊する。この点を適宜適切なタイミングで中国政府に伝えれば、中国に対して、台湾有事を起こすことを思い留まらせる上でも一定の効果があると思われるので、この視点からも、台湾問題を事前に突き詰めておくことの意義は大きいと思われる。

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