イスラム教徒も増加したが、より緩やかなペースだ。サハラ以南の人口に占めるキリスト教の割合は1910年の9.1%から2020年には62%に上昇しているが、同年のイスラム教徒のシェアはわずか33%だった。
いずれの信仰も熱心に改宗者を求めており、競争と外部の関与は避けられない。イスラム教徒の世界的なネットワークは、イスラム教の説教者と学校を支援し、米国に限らず域外のキリスト教徒は、キリスト教の布教と教育活動を支持している。
アフリカのキリスト教徒は、多くの場合本能的に親米派であり親イスラエル派だが、イスラム教徒はしばしば異なる見解を持っている。双方は、ヨーロッパや北米に移住するとき、新しい故郷に異なる期待を持ち、社会への統合への道はしばしば異なる方向に進む。
サハラ以南アフリカの宗教的再構成は、この地域の最も重要な文化的現象であるが、最も重要な地政学的なストーリーは再植民地化だ。ほとんどのアフリカ諸国が外部からの支援なしには成り立たず、衰退する欧州がもはや伝統的な役割を果たす意思や能力を失っている中、中国、ロシア、トルコ、アラブ首長国連邦などの諸国がそのギャップを埋めている。
トランプのアフリカ政策のアプローチは、二つの認識を含むようだ。第一に、アフリカのように鉱物資源とエネルギー資源が豊富な大陸をめぐる新たな権力争奪戦に、米国が無関心でいられないということ。第二に、アフリカのキリスト教徒への声高な支持は、対外的目標の達成に寄与すると同時に、国内での政治的支持固めにもつながるという認識である。
トランプは、ジハード主義の暴力と中国などによる搾取的再植民地化の双方に対抗してサハラ以南のアフリカのキリスト教徒を支持することで、彼らを米国側に引き寄せられると期待している。国内では、多くの米国人キリスト教徒がアフリカの信徒に抱く自然な共感が、アメリカ・ファースト派の支援よりもアフリカ政策を後押しする政治的基盤になるとみている。困難に直面するキリスト教徒を支援する姿勢は、彼のイスラエル政策に対する過激な極右ネット保守層の批判の一部を和らげる効果もある。
海兵隊をナイジェリアに派遣するなどということにはならないだろう。それでも、外交とアフリカは、大方の支持者や批判者が想像していた以上に第2期トランプ政権において重要な位置を占めることになりそうだ。
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「ディール」の材料か
この論説は、トランプがアフリカのキリスト教徒保護を打ち上げることが同地域における外交目的実現と国内の支持層の獲得という一石二鳥の効果があると認識しており、この意味でトランプ政権における外交とアフリカの役割は予想されたよりも重要となると分析しているが、極めて興味深い見方である。
トランプは、10月31日にナイジェリアを「宗教的自由に関する特別懸念国」に指定し、11月1日に、ナイジェリア政府がキリスト教徒保護に失敗した場合には、全ての援助を停止し、米軍を投入してイスラム過激派を抹殺するとして、国防総省にその準備を指示したと公表した。
