2025年12月31日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年12月11日

 第四に、乗員向けの生活設備・物資も十分に積載できるので、長期任務が可能となり、長期作戦中に基地へ戻る必要がないため、戦域でのプレゼンス維持能力が高い。米海軍原潜は数日で太平洋から大西洋へ移動できる。戦略原潜は“第二撃能力”の基盤となる。

 第五に、原潜は大型で強固な耐圧殻を持つため、通常型より深い潜航深度をとれる。深深度におけるセンサー運用や被探知回避において戦略上有利である。

「日本も検討する可能性がある」

 米海軍の制服組トップであるコードル海軍作戦部長は11月17日、都内で新聞社の取材に答え、原子力潜水艦を巡り「日本も韓国のように原潜保有を検討する可能性がある」と述べた由である。米韓両国政府は韓国の原子力潜水艦の建造を米国が承認する共同文書を公表したとも報道されている。

 高市政権発足にあたり、自民・維新両党は2党間の合意を発表し、その中には以下の了解が含まれている。すなわち、「抑止力の大幅な強化を行うため、スタンド・オフ防衛能力の整備を加速化する観点から、反撃能力を持つ長射程ミサイルなどの整備および陸上展開先の着実な進展を行うと同時に、長射程のミサイルを搭載し長距離・長期間の移動や潜航を可能とする次世代の動力を活用したVLS(垂直発射型ミサイル)搭載潜水艦の保有にかかる政策を推進する」。

 船舶の推進機関に原子力エネルギーを用いることは、核不拡散条約上の規定に反することではないということは、原子力船「むつ」の建造の際に日本国内では整理がついている。もちろん、原潜の建造は一朝一夕でできることではなく、技術的政治的戦略的な準備を必要とするが、周辺の戦略環境、同盟同志諸国との協力関係の現状などを考慮すれば、その開発と保有に関する議論を開始すべき時期が来ているように思われる。

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