2025年12月26日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年12月26日

 まず、上記の社説も指摘するとおり、今回のイランの提案がただの時間稼ぎに過ぎない可能性は否定出来ない。アラグチ外相は、高度濃縮ウランは核施設の瓦礫の下と主張しているが、いまだに国際原子力機関(IAEA)の査察を拒否し続けている。高度濃縮ウランの在処がハッキリしない限り、時間稼ぎと言われても仕方ないであろう。

 トランプ大統領は、「交渉にオープンだ」と言っている由だが、その前提として引き続き「イランには一切のウラン濃縮を認めない」という立場なのではないか。それではイラン側は呑めない。

 また、アラグチ外相の、「米国を含めた各国による監視でほとんど合意していた」との主張は怪しい。公開情報ベースでは、空爆前の交渉で米国がイラン国外でのペルシャ湾岸諸国の国際的なコンソーシアムによるウラン濃縮を提案し、イラン側が、イラン国内で行うという対案を出したことが判明しているが、アラグチ外相の説明からはかなり距離がある。同外相の主張は、IAEAによる査察を米国も含めた国際的監視に置き換えたに過ぎない。

ネタニヤフは手段を選ばない

 上記の社説は、イラン側の状況から議論を展開しているが、交渉には相手がおり、一番の問題は、交渉の相手方のトランプ大統領とネタニヤフ首相の問題だ。トランプ大統領が果たして「イランに核濃縮を認めない」という旗を降ろしたのかどうか以前に、1月のガザの停戦を破ったイスラエルを咎めるどころか支持したトランプ大統領が「イランの核開発は核武装が目的で、イスラエルを核攻撃する」と確信しているイスラエルを説得できるとは思えない。

 そして、ネタニヤフ首相が、来年の再選に向けて手段を選ばないであろうことは言うまでもなく、6月の空爆が作戦目標(核施設の完全破壊からイスラム革命体制の排除)を実現していないことから、イスラエルのイラン再空爆は時間の問題であり、トランプ大統領には止められないであろう。

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