2026年1月10日(土)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2026年1月8日

BYD、本国での“失速”

 中国では20年を起点にNEVの急成長が始まった。10年代後半、BYDの販売台数は40万~50万台で停滞していたが、この波に乗って一気に拡大していく。24年には427万台(うち海外市場で42万台)、20年比でほぼ10倍増というすさまじい成長を続けている。

 販売台数全体で見れば、25年も勢いは止まっていない。460万台を売り上げ、前年から30万台以上伸ばした。ただ、中国国内市場だけではマイナス成長だ。25年の販売台数は前年比30万台減の355万台にとどまった。25年6月までは好調が続いていたが、そこから急ブレーキがかかった。

 転機となったのは、中国政府の介入だ。この経緯については、浜銀総合研究所調査部の奥山要一郎研究員のレポート「BYDが仕掛けた値下げ競争、背景に在庫増と電池新基準」に詳しい。

 BYDが25年5月下旬に22車種の価格を引き下げるキャンペーンを始めたが、中国汽車工業協会は「産業の健全な発展を阻害し、消費者の利益を損なう」と批判。管轄省庁の中国工業情報化部も「無秩序な価格競争」だとして批判に加わった。

 シェアを奪い合って激しい価格競争が続き、誰も利益を出せない消耗戦になることを、中国では「内巻」(インボリューション)という。海の渦のように、らせんを描いて回っていくと次第に円が小さくなっていくように、企業の利益が縮小していくことを指す。

 中国では22年からデフレが始まり、さまざまな業界で「内巻」が繰り広げられている。自動車もその一つだ。

 NEVの急成長の影で「内巻」は加熱してきた。23年には価格競争の過熱ぶりに政府が介入し、大手自動車メーカー16社が「公平な市場秩序の維持の承諾書」に署名させ、過剰な値引きを抑制するよう促した。

 だが、価格引き下げ余力が大きいBYDが、ほとぼりが冷めたとみるや値下げをしかけることが繰り返された。前述のレポートによると、25年5月の値下げは550万台と高いレベルに設定した年間販売目標達成が危ういこと、在庫が増加したこと、26年7月に施行される新たな車載電池安全基準の適用前に旧基準車を売り切る必要があったためと分析している。


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