2026年1月16日(金)

Wedge REPORT

2026年1月16日

専門職の価値を自ら下げる危うさ

 確かに、従来の教員免許制度には課題もあった。とりわけ小・中学校免許は、取得に必要な単位数や実習要件が多く、教育学部を擁する国立大学に履修環境が集中しやすいなど、制度の硬直性は否定できない。

 しかし、単位数削減という形で入口のハードルを下げることは、「誰でもなれる仕事」というメッセージを社会に発信することにもなる。それは志望者の裾野を広げるどころか、教職への憧れや信頼を損ないかねない。

 単位数削減は、教員不足問題に対して、教員という専門職の価値そのものを切り下げる政策に他ならない。

教師はなぜ教師になろうとするのか

 教員志望者減少の本質を考えるためには、「人はなぜ教員になろうとしてきたのか」を問い直す必要がある。

 「本邦における小中学校教師の教職を志望する動機に関する検討」(三和秀平・信州大学学術研究院教育学系ほか、2023年)によれば、教職志望の主な理由として、①教えること自体への興味ややりがい、②子どもの成長に関わることへの価値意識、③尊敬できる教師との出会い、④社会的意義や公共性への志向、などが挙げられている。

 これらの動機は、教員という仕事が「人格的影響力を持つ専門職」として社会から信頼され、必要とされてきたことが、志望理由として重要であったことを示唆している。

 しかし、現在インターネットやSNSの普及によって、教員の長時間労働や過剰な業務負担は広く可視化され、学生の教職志望に大きな影響を与えている。教員志望学生が教職を敬遠する理由として、「過酷な労働環境」「本来業務以外の仕事の多さ」「待遇の低さ」が上位を占めている。

 重要なのは、彼らがまだ教壇に立つ前段階で、教員という仕事の魅力に触れることなく離脱している点である。制度や環境への不信が、入口に立つ前から志望動機を削いでいる。

 多くの現場教員は、教員の資質が採用時点で完成しているものではなく、その後の育成環境や学校組織の文化、管理職のマネジメントによって大きく左右されることを実感している。

 実際には学校現場における同僚性のもとに行われる継続的な研修が、教員としての成長を決定づける。それにもかかわらず、採用倍率という数字で追及され続ける行政が偏った政策へと引き寄せてしまう。その結果、制度の根幹である免許制度にまで、場当たり的な介入が及ぶ。


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