2026年1月18日(日)

スポーツ名著から読む現代史

2026年1月18日

シーズン開幕前の「花相撲」

 WBCIは06年の第1回大会を開催するため、大リーグ機構と選手会が共同で立ち上げた組織だ。WBCの興行権、放映権やスポンサーとの交渉などすべての権限を有し、WBCにまつわるビジネスのすべてを取り仕切っている。

 今から10年余り前、WBCの構想が明らかになった時、日本国内では「シーズン前の花相撲」と、否定的な見方が強かった。公式戦の開幕前、メジャーの主力選手が本気で戦うだろうか、という疑問に加え、30球団のオーナーの中にも「開幕前の大事な時期に選手がケガをしたら」と否定的な声が強いと伝わってきた。

 日本プロ野球選手会も不参加を機関決定した。そんな中、日米野球を通じてつながりのある読売新聞がWBCIに協力し、大会の実現にこぎつけた経緯がある。

 第1回大会は、多国籍化した大リーガーを出身国・地域別に分け、「国際大会」の装いを施したものの、さまざまな不備が露呈した。投手の投球数にさまざまな制限を設けたため、練習試合の印象が強い試合となった。

 メジャーの審判の協力を得られなかったため、マイナーリーグの審判による不安定な判定が問題にもなった。さらに、決勝ラウンドを米国内で開催しながら、米国が決勝に残れず、米国内のファンからもカゲの薄い大会となってしまった。

大会の価値を高めた大谷

 ところが、そうした見方に変化をもたらしたのが前回23年の第5回大会だった。17年の第4回大会で初めて優勝した米国は連覇を目指し、エンゼルスの主砲、マイク・トラウトをはじめ各球団の主力級のメンバーをそろえ、順当に勝ち進んだ。コロナ禍で2年間、大会が延期され、国際大会に飢えていたこともあったのか、マイアミのローンデポ・パークで行われた準々決勝以降の5試合は超満員の観客で埋まった。米国の野球ファンには「強い米国」を印象付ける格好の機会になるはずだった。

 ところがその米国の前に決勝戦で立ちはだかったのが侍ジャパンだった。3-2の日本リードで迎えた9回、大谷翔平がクローザーとして登板、最後はチームメートのトラウトを空振り三振に打ち取って米国の連覇の夢を打ち砕いた。

 大谷がグラブを高々と投げ上げ、喜びを爆発させたシーンは米国内でも何度も映し出された。一部の好事家の間でしか話題にならなかったWBCが全米の注目を集めるイベントへとグレードアップした瞬間でもあった。


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