2026年1月22日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2026年1月22日

 問題は、このような考え方は公式には説明しにくいことだ。それは対米関係に対する配慮というだけではない。一部を除き西側諸国の多くは、米政権の行為そのものの合法性評価には触れず、「法的整合性」と、麻薬密輸等の悪業と戦うべき「実質的な必要性」を併せ指摘する声明を発しており、現時点において賢明な対応と言える。

中露の侵略行為と本質的に異なる

 次に、今般の米政権の行為を中露の侵略行為と同列に論ずることについて。米国の今次軍事作戦をロシアのウクライナ侵攻と比較した場合、①主権国家への武力行使、②体制の正当性の否定、③自国の安全保障を理由としていることなど、外観上の類似点があることから両者を同一視する向きがあるが、以下の点で本質的に異なっている。

 何よりも、軍事行動の対象たる政権の内実が全く異なる。マドゥロ政権については反対派の弾圧や麻薬密輸等、その非人道的・不正・違法行為が明白であるのに対し、ウクライナは民主的な選挙で選ばれた大統領が統治し、かつロシアに対し何ら違法行為を行っていない。ベネズエラの場合のような、法的整合性と実質的な正義の実現との間に緊張関係はなく、ロシアによる侵略の違法性は余りに明らかだ。

 第二に、軍事行動の目的。プーチンは、ウクライナがロシアの一部であるとしてその国家性自体を否定した上で、領土を獲得し直接統治の下におこうとしている。米政権はマドゥロ政権の打倒が目的であって、「暫定的な運営」を主張するが、ベネズエラの国家性を全く否定していない。

 第三に軍事行動の態様。プーチンは民間人、学校・病院などを含む民生施設への無差別攻撃や子供の誘拐など、無数の人道に反する行為を行っているが、今次米政権の行為はマドゥロ大統領の拘束に焦点が当てられている。

 以上のような相違を無視して、ロシアのウクライナ侵攻と今回の米国の対応を同列に論じることこそが、権威主義国家による違法行為を助長することに繋がる。

 なお、今後米国がベネズエラ内政に深く関与することで却って同国の一層の不安定化を招くことになれば、それこそ中露の思うつぼということになる。ベネズエラの統治はできるだけ早期に同国の国民にゆだねるべきだ。

 また、米国が中南米に対する政治・軍事的関与をさらに強めていけば、欧州やアジアに対する関与は一層削減せざるを得なくなり、中露両国による行動の自由度が増すであろう。

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