原油価格の暴騰などがない限り、26年も25年並みのCFベース経常黒字は確保可能と考える。近年、日本のサービス収支赤字は年々拡大するデジタル赤字を旅行収支黒字が打ち返すことで何とか抑制されているからだ。しかし、敢えて現時点でのリスクを挙げるとすれば、高市首相の台湾有事を巡る発言を受けた対中関係の悪化がどれほど続き、結果として旅行収支黒字をどれほど圧縮させるのかは注目せざるを得ない。
中国は今後、日本側に様々な対抗措置を打ち出す可能性がある。日中関係次第で、需給環境は25年と大きく変わらないか、もしくは悪化するシナリオも考えられる。
複雑化する情勢に
日本はどう向き合うべきか
なお、まず、高市政権発足後の債券・為替市場の変動を踏まえると、政府・与党からの情報発信は交通整理が必要であると感じる。昨年10~12月期は片山さつき財務大臣が円安に関し「憂慮している」と述べる傍らで、経済アドバイザーを務める民間エコノミストらによる利上げの先送りや非常に大きな規模の補正予算、果ては為替介入の必要性を求めるような発言がクローズアップされていた。
もちろん、一義的には財政・通貨・金融政策は財務大臣ないし日銀総裁からの情報発信が政府見解のはずだが、金融市場は〝直情的〟でもあり、政府に近いエコノミストから耳目を引く情報発信があれば、これを材料視してしまうこともある(特に海外メディアを通じた発信にはその傾向が強い)。市場の混乱が憂慮される局面では、奔放な発言はある程度、政権として制御(一本化)した方が無難ではないかと思われる。
また、第2次トランプ政権下における米国との関係性や距離感も適切に見極める必要もある。日本のメディアではほとんど指摘されていないが、25年9月のベッセント米財務長官と加藤勝信財務大臣(当時)による「為替共同声明」では、外貨準備構成通貨の公表義務化が明記された。近年、外貨準備構成通貨におけるドル比率は低下傾向にあり、「せめて親米国に関してはこのような動きに歯止めをかけたい」と米国側が考えている可能性もある。世界最大の米国債保有国である日本が、公表義務化を受け入れたことで、巨額の外貨準備を保有するアジア諸国(印・台湾・香港・韓国など)にも同様の要求が及ぶことも考えられる。
一連の関税交渉や80兆円もの対米投資など、第2次トランプ政権との片務的な契約が目立ったのも25年の特徴だった。日米関係はもちろん重要だが、日本が米国の要求に盲従し続けることがどこまで日本の国益につながるのか、熟慮するケースも出てくるのではないか。
それ以上に国民の意識改革も促したい。現状、「インフレで困る人がインフレ誘発的な積極財政を支持する」という皮肉な構図がある。円安を断ち切らない限りこの悪循環は続くだろう。利上げは不人気かもしれないが、だからこそ独立性を持った日銀が果断にこれを実行する必要がある。政治的思惑がどうあれ、だ。
22年に始まった円安相場も26年で5年目を迎える。もはや一時的とは言えなくなったこの相場現象を解き明かすには、多面的な分析が必要である。為替市場では名目ベースの日米金利差とドル・円相場を同じ図表にプロットしてその相関が注目されやすいが、このアプローチが報われていたのは円金利が動かなかった時代に「米金利が上がればドルも上がる」という関係性があったからだ。
インフレに伴い日本が「金利のある時代」に復帰した以上、円金利上昇の背景にある経済・金融情勢の変化が何を意味するのかまで吟味する必要がある。「ドル安下での円安」が一過性の現象なのか。もしくは新常態なのか。26年はその争点の答えを見極める年になる。
