2026年1月23日(金)

医療神話の終焉―メンタルクリニックの現場から

2026年1月23日

社会保障は企業が生み出した富を再分配する

 社会保障は、企業活動が生み出した富を、国家が制度的に再分配することで成立する。もし、就業者が減り、企業活動が停滞し、生産性が落ちれば、税収は減り、保険料は集まらず、制度は維持できなくなる。

 社会保障(年金・医療・介護・雇用保険など)の財源は、社会保険料(労使折半が原則)、税(法人税・所得税・消費税など)、公費(国庫負担)からなる。このうち、賃金の原資は企業活動であり、法人税は利益活動から、消費税も最終的には企業活動による所得・消費から生じる。企業が価値を生み出さなければ、再分配されるはずの富そのものが枯渇する。

 社会保障とは、国が惜しみなく与え、国民が飽くことなく奪うものではない。あくまで「企業による生産→賃金による分配→税・保険料による再分配」という循環の一段階である。したがって、生産が滞れば、循環自体が衰え、再分配は不可能となる。

 日本では、高度成長とともに社会保障制度が充実した。企業が成長し、雇用が拡大し、社会保険料収入が安定したからである。

 企業活動と社会保障は、連動して拡大する。逆に、企業の生産活動が停滞すれば、社会保障は維持できなくなる。

 実例はすでに起きている。企業が撤退した地方自治体では、雇用が減り、税収が減り、生活保護と医療扶助は増大し、財政破綻を招いている。年金も、現役世代が減少すれば、保険料率を引き上げるか、給付を抑制するしかない。

 社会保障にとって、その生産装置は企業である。企業が弱体化すれば、社会保障も同じ運命をたどる。

休職ビジネスは新手の貧困ビジネス

 休職診断書ビジネスは、人材を持続的に産業社会から脱落させていく。

 もちろん、「働くこと」を免除された給付が許容される場合もある。重度身体障害、重度知的障害、重度精神障害、致死性疾患、高齢者、急性期の疾病・外傷等である。これらにおいては、「働けない」ことは本人の選択ではない。この点は社会的な合意も得られよう。

 問題は、まだ働けるケースである。休職ビジネスは、今、働いている人に休職を勧め、環境調整で就労可能な場合にも休職を勧め、短期の休職ですむ人に長期の休職を勧め、長期休職そのものをして二次被害的にこころの健康を悪化させ、永遠に回復できない状態に落とし込む。

 診断書を駆使し、傷病手当金・公的給付金等の制度を運用し、休職・退職・非就労に金銭的なインセンティブが付く状態を作り上げる。こうして、医原性(医療を原因とした)就労不能状態を作り出し、自らは「こころ病む人によりそう医師」を演じる。

休職ビジネスは傷病手当金などを使い、休職者に〝対価〟も与える

 それは、弱者救済を装う、新手の貧困ビジネスのようである。従来型の貧困ビジネスは、対象をすでに困窮した可視的貧困層に限定していたが、休職ビジネスは、中間層・勤労者にシフトしている。しかし、手口は同じである。

 まず、不安をあおる。「このままだと壊れる。休職しなければ過労死する」と言って脅す。制度利用へと促し、しかも、その制度が本来一時的な適用を目的としたものであっても、恒常利用へと誘導する。医師の診断書という「権威」を用いて、会社・本人・家族を黙らせる。

 最終的には、職場・仕事・役割から切り離し、二度と社会復帰できない状態に追い込む。一方で、休職ビジネスの主体たるクリニックにとっては、通院医療費、診断書、継続治療により、長期にわたる安定した収入の確保につながる。


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