第七のリスク:気候問題の衰退。気候変動への対応策が弱まる深刻なリスクがあり、最も被害を受けている国々がその影響を受けることとなる。米国が気候変動対策に反対しているので、再生可能エネルギー分野での主導権を中国が握っている。
第八のリスク:危険な中東。この地域の最も長く続く問題であるガザとイランは、平和に近づくよりは、紛争の再燃に近づくかもしれない。
第九のリスク:AI:大いなる破壊者。AI は医療面で便益をもたらすが、多くの既存の職を無意味化することで、新たな社会的混乱を生み、民主主義の崩壊に寄与する。
第十のリスク:不安定なアジア太平洋。米中関係は26年内は安定しているだろう。安全保障上の紛争リスクはむしろインド・パキスタン間の緊張にある。
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《力》の要素が強まる時代での日本
フォーリン・ポリシー誌の年初の「地政学リスク・トップ 10」についての記事である。10のリストの中で、経済リスクを重視し、中国リスクを楽観視している。この記事は、米国によるベネズエラへの軍事作戦の一日前に掲載されたが、そうした行動に出る可能性も視野に入れられていた。
記事の題名は「混沌の時代の到来」であるが、多くの識者が同様の予想をしている。「地政学上のワイルド・ウェスト」という表現もなされている。
ワイルド・ウェストとは、米国の西部開拓時代を指し、ルールがない無法地帯、保安官がいても法に従わない無法者(アウトロー)が跋扈(ばっこ)する弱肉強食の世界である。国際関係の構成要素を《力》《ルール》《理念》の三つと捉えるならば、《ルール》の支配する領域が縮小し、《力》の支配する領域が拡大していることを意味する。
この記事は、総論部分で「三つの略奪的で修正主義的な大国」と記し、米国はロシア、中国とともに《ルール》を破り《力》によって自らの目的を達成しようとする存在と捉えられている。米国のそうした姿は、ベネズエラへの軍事作戦で如実に現れた。
そうした中、日本はどう行動すべきか。日本にとって《ルール》が大切なことは言をまたないが、《力》の要素が強まる時代にあって《ルール》を守ろうと主張するだけでは対応策にならない。反対に、自らが「略奪的で修正主義的な大国」の三カ国に対峙する《力》の実体となるのはどうか。
