原料を輸入に頼るリスク
水産物の輸入は活発で取引数量は増加の一途ですが、これは必ずしも日本が必要分を輸入できるよう供給が増えているわけではありません。世界全体では、これからも人口増加と水産物への需要増加で供給不足が確実に進んでいきます。
20年に比べ30年は世界人口が7億人増加する見通しです。一人当たりの年間需要量が約20キロ(頭・骨・内臓込み)として30年には約1400万トンも需要が増えるのです。その数量は、米国・ロシア・日本の3カ国の生産量(漁業と養殖)と同量かそれ以上に該当します。
もちろん、10年間で1400万トンも水産物の供給量を増やすことはできません。ではどうするのか?価格を上げて水産物の需要を減らすというのがその手段となります。
85年のプラザ合意で円高が進みました。その時期が日本の漁獲量が減り始める時期と重なり水産物の輸入が一気に増加していきました。たまたま筆者は北欧をはじめとする世界の最前線から水産物を買付する時期と重なっていました。
日本の買付力は国際的に「圧倒的」な強さで、外国は日本が買えない規格や品質のものを買うマーケットでした。世界の水産物の需要が拡大して、米国や欧州市場が日本市場を大きく凌駕し、さらにその差が拡大していている現在とは全く違う環境でした。
日本の水産物輸入は01年の382万トンがピークでした。24年の輸入量は216万トンですので、その減少が著しいことがわかります。世界需要の増加で、今後も輸入量が減り続けるだけでなく、輸入する水産物の単価は上昇していきます。
原料の供給不足に備え、レアアース・天然ガスのように輸入先を多様化していくことが重要であることは言うまでもありません。
中国・アジア加工シフトによる新たなリスク
水産物の輸入数量が大きく減少したと書きましたが、輸入通関統計ではわからない数量があります。それは、世界で買い付けた水産物を日本に直接輸入せず、中国や東南アジアで原料を加工し、製品を日本に輸出する加工貿易です。
例えば日本が買い付けているノルウェーサバでは、25年のノルウェーからの輸出統計でみると直接の日本向けは2.7万トンです。それ以外に、大半は日本が買い付けて海外加工に回している中国向け(1.9万トン)とベトナム向け(3.1万トン)があります。
もともとは中国加工主体でしたが、ベトナムで加工した場合の関税が下がったために、25年はベトナム向けが中国向けを逆転しています。なお両国向けにはそれぞれの国で消費されている数量なども含んでいますので、全ての原料が加工されて日本に輸出されるわけではありません。
日本での人手不足・高い人件費などの理由で進んでいった中国加工。当初は日本の水産加工業者が技術提供して生産指導をしていました。ところが相次ぐ品質問題や中国加工品に対する需要減少で、次々と日本の加工業者は手を引いていきました。
ところが、技術は中国側に残りました。中国側が買った原料からできた製品を日本が輸入するという形に変わるだけでなく、海外原料の買付で競合するケースも発生しています。中国の国内市場での需要が増えていけば、日本に製品を輸出する重要性が薄らいでいきます。
