―― サボテンにはその他に、炭素を土壌に固定する作用などの珍しい生態がありますが、重金属や残留農薬にも耐性があって、それらを体内に取り込めるとか。これは興味深いですよね、汚染土壌は世界各地にありますから。
「それはまだ研究中ですね。取り込んだ毒物を含めて、どう処分するか。その廃棄の仕方を慎重に検討しておかないと、すぐに実用化とは行きません」
堀部さんは2020年からのコロナ禍の3年間、アメリカ南西部やメキシコ、イタリアなどのサボテン生産地に行けないため、日本国内のサボテン生産地を巡り歩いた。
「広島県の庄原市など、食用サボテンを特産品にして町興しをしたい、というところがいくつかありましたね。温暖な四国では、10カ所ほどで農家が実験的な生産をしていました。あと、愛知、長野、岐阜県とか。企業として、サボテン食品の輸入や販売をはじめた会社も、東京などにありました」
堀部さんは現在、自治体・企業・団体・個人などと共に、サボテンの産学共同研究や情報交換を推進しているが、その土台になっているのが大学の研究室で行っている長年の取り組みである。
世界で初めて食用サボテンの水耕栽培に成功
堀部さんは世界で初めて、食用サボテンの水耕栽培に成功したのだ。
「培養液での栽培は、土壌栽培よりも成長が速くなるし、トゲの発生も抑制できます」
目下のところは、その延長線上で、LED照明で光の波長によるサボテンの発育・成長の調整、水耕栽培による重金属耐性試験など、さまざまな応用研究に挑戦している。今後は研究室からも、あらたなサボテンの可能性が広がるのかもしれない。
―― ところでサボテン料理ですが、日本ならどこで食べられますか?
「東京ならメキシコ料理店でしょう。メキシコは食用サボテンの最大の生産地ですからね。サボテン料理店が多い街なら、春日井市です」
中部大学のある春日井市にはサボテン料理を提供する店が28店舗ある。サボテンの中華もあれば、串焼きの店も。堀部さんが春日井サボテン振興アドバイザーを務める春日井市は、サボテン出荷量が日本で一番多いのだ。
―― <おわりに>に、お子さん2人がサボテンの絵を描いてプレゼントしてくれる、とあります。ご家族は、妻子ともどもサボテン好き?
「といっても、妻は“サボテンは家に置かないで”って言ってますね。子どもたちが小さいから、トゲが危ないって。ですから我が家にはサボテンがまったくないんです。サボテンがあるのは、すべて大学や研究室の方です」
堀部さんは今後、「世界の乾燥地でサボテンが食料不足にどう役立っているのか、行って自分の目で見てみたい」そうだが、それは次の本になりそうだ。
