2026年3月4日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2026年3月4日

 「ルールに基づく秩序」は厳しい脅威の下にある。ウクライナへのロシアの侵攻は最も基本的なルールの一つである領土の一体性の尊重の露骨な侵害だった。

 中国は南シナ海に対するその領土権の主張に関する国際裁判の判決を無視している。トランプ政権はルールと規範に気儘に違反している。国連を見くびり、世界全体に貿易戦争を仕掛けることに加えて、幾多の国際合意に違反し、健康から気候変動に至るまで監督を任務とする国際機関から脱退した。

 対照的に、欧州は「ルールに基づく秩序」を保全する価値があると信じている。実際、欧州はその中核的柱の多くを強化することに骨を折っている。

 欧州連合(EU)のメルコスールやインドとの自由貿易協定がそれである。さらに、気候変動への対策や健康への脅威の緩和に関する世界的な進歩を維持するため、欧州は他の諸国と協力している。

 欧州は強大国の気紛れに服従する世界には何の関心もない――そこでは、脆弱国は常に狼に投げ与えられ、正義は何の意味も持たない。ルビオの演説はそこまでは言わなかった。

 ルビオの演説はトランプよりも優しく穏やかだったかも知れない。しかし、メッセージは同じだった。大西洋を挟んだ分断は巨大なものとなり、なお拡大しつつある。

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NATOへのコミットも名言しない

 マルコ・ルビオのミュンヘン安全保障会議における演説は糖衣を施した(sugar-coated)演説で穏やかに響いたかも知れないが、実質において、トランプ政権の体質と政策の変化を示すものは何もなかった。それが、この論説が言っていることであり、欧州の受け止め方である。しかし、変化がないどころか、ルビオの演説はトランプ政権が「ルールに基づく秩序」を無用の長物と見做していることを明確にした。

 ルビオは「ルールに基づく世界秩序」という使い古された言葉が馬鹿げたことに今や国益よりも上部に位置するに至った、との趣旨を述べたが、MAGAの歪んだ鏡にはそのように映るらしい。彼には「ルールに基づく秩序」は無用の概念らしく、国連が無力だったことを引き合いに出して、イランの核開発を封じ込めるためには米軍のB-2爆撃機による精密爆撃を必要とし、ベネズエラの麻薬テロリストの独裁者に裁きを受けさせるためには米軍の特殊部隊を必要としたなどと述べて、国際法(ルールそのものである)違反の米国の行動を正当化した。


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