以上の通り、トランプ政権が重要鉱物サプライチェーン確保のための貿易圏構想実現のために計画的にまた重点的に取り組んでいることは確かであり、英、仏、独、伊の主要な欧州諸国やインドやブラジルが参加したことは大きな成果であると言えるし、カナダ、パキスタン、モンゴル、湾岸諸国、カザフスタン、ウズベキスタン等が名を連ねていることは注目される。
他方、重要鉱物の生産国を含めて重要な不参加国があることにも留意する必要があろう。アジアでは、インドネシア、ベトナム、アフリカでは、南アフリカ、ナイジェリア、エチオピア等、南米ではチリ、コロンビア、欧州では、デンマーク、スペイン等が不参加である。
不参加の理由は国によって様々であろうが、その中には重要鉱物の生産、加工等を国有化していること、既に中国がこの分野で相当な投資をしていること、或いは単純に中国との関係に配慮し米中の間で中立的な姿勢を維持したいといった意図やトランプ政権に対する反感や不信感があるであろう。これらの不参加国は、このイニシアティブの限界を示すものであり、また、中国はこれら不参加国との関係を更に緊密化しようと欲するかもしれない。
どのような多国間アプローチとなるか?
また、このイニシアティブが、トランプ政権にしては珍しい多国間アプローチであり、同盟国やパートナー国との協力を重視し、米国のみならず参加国全体の利益に配慮する点で、これまでとは違う点に注目する向きもある。もっとも、このイニシアティブは多国間とは言っても選別された国を対象としており、投資に関しては二国間での取引も行われるであろうし、最低価格の設定等がどのように決められるかといった詳細は不明で、米国の利益となる範囲での多国間アプローチに過ぎないのかもしれない。
とはいえ、昨年12月に開催されたAIに関連するサプライチェーンの安全保障の観点からの保護や半導体関連のレアアースのサプライチェーンの確保をテーマとする「Pax Silica」 サミットも同盟国とのマルチ・アプローチの一種であり、トランプ政権が中国と対抗する上で、同盟国やパートナー国との協力関係が米国の利益にもなることを学習したとすれば、結構なことである。

