だが、ハメネイ師はしっかり学んでいたようだ。米ニューヨーク・タイムズによると、同師は攻撃を受ける直前、イランの国防・外交を統括する最高安全保障委員会(SNSC)のラリジャニ事務局長を呼んで自分に「万が一」があった場合の代行を頼んだ。改革穏健派のペゼシュキアン大統領には託さなかったとされるが、ハメネイ師が殺害される中の混乱で、この辺の事情は定かではない。
権益保持が最優先
さらに同師は自分が殺害された時に備え、政治や軍事の重要事項を決定する小人数の「臨時評議会」を設立。メンバーにはペゼシュキアン大統領や首席補佐官のヘジャジ氏、ガリバフ国会議長らが含まれているという。
イスラエルによると、ヘジャジ氏も攻撃で死亡したとされる。ハメネイ師は最高指導者を選任する「専門家会議」が正式に後任を決定するまでの間、臨時評議会による集団指導体制で国政を運営させる方針だったとみられる。最高指導者の選定には数カ月要する見通し。
最高指導者は高潔なシーア派の聖職者でなければならないが、同師は司法のトップであるモセニエジャイ師、首席補佐官のヘジャジ師、初代最高指導者ホメイニ師の孫のハッサン・ホメイニ師の3人を後任として推薦していた。ハメネイ以後の体制についてトランプ氏は「適任者は何人かいる」と述べている。
革命後47年が経過した今、権力のバランスは最高指導者直属の革命防衛隊に傾いている。革命防衛隊は「聖域」である組織の権益を守るため、自らの思惑通りに動く人物を「傀儡」指導者として選任させたい考えとみられる。事実上のクーデターと言えるだろう。彼らにとって権益保持が最優先なのだ。
騙し打ちにあったオマーン外相
攻撃継続について、イスラエルは「4日間」、トランプ大統領は「1週間ないし必要なだけ」としており、イランの報復の度合いを見ながら決めるもようだ。イラン側は今回、体制の存続がかかっているだけに背水の陣で臨むとみられ、イスラエルや湾岸の米軍基地、艦船だけではなく、基地のあるカタール、バーレーン、ヨルダンなども巻き添えを食う恐れがある。
それにしても今回、醜態をさらしたのはジュネーブでの米国とイランの核協議を仲介したオマーンのバドル外相だ。協議の終了後、「大きな進展があった」と成果を強調、次回協議をウイーンで開催すると明言、その後バンス副大統領とも会談していた。
だが、この時点で米国とイスラエルは攻撃をすでに決めており、核協議はイラン側や世界を油断させ、攻撃をスムーズに行うためのアリバイないしカモフラージュに使われていた可能性が高い。バドル外相は米国に「騙し打ち」にあったわけだ。それとも騙されたフリをしていただけなのか。
