「12日間戦争」の時もトランプ大統領は攻撃するかどうかを決定するには2週間程度かかると言った2日後に攻撃に踏み切っており、米側の演技を見抜けなかったバドル外相は「いい面の皮」(識者)だった。米国は今後、オマーンを頼りにすることはできまい。今回の裏切りが高くつくかもしれない。
ネタニヤフに操られたトランプ
今回の攻撃は「必然性なき攻撃」(米紙)と指摘されるように、米国に切迫した脅威はなかった。トランプ大統領は攻撃後の8分間のビデオ演説で、イランが核計画の再建を試み、米本土に届く弾道ミサイルを開発中であることに言及した。
しかし、大統領が先の一般教書演説でも強調したように「12日間戦争」でイランの核施設を破壊した。破壊された核施設は「切迫した脅威」とは言えまい。弾道ミサイルにしても米国に届くミサイルの開発には10年以上かかると国防情報局は指摘しており、攻撃を仕掛ける緊急性はなかった。
「大義なき戦争」という意味では、虚偽の情報を基にイラク戦争に踏み込んだ状況と同じだ。「なぜいまなのか」との疑問に大統領は一切答えていない。
トランプ支持者である右派の論客タッカー・カールソン氏も強く批判、共和党のグリーン元下院議員は「最悪の裏切り」と厳しい。トランプ氏は歴代の政権の中東軍事介入を強く非難して大統領になっただけに、長引けばさらに批判を受けかねない。
なぜトランプ氏は攻撃に踏み切ったのか。1月にベネズエラのマドゥロ大統領の拉致に成功したのをはじめ、「力による平和」の政策に自信を持ち始めている。そこに付け入ったのがイスラエルのネタニヤフ首相だ。大統領をどう説得したのかは不明だが、大統領が首相に引きずり込まれたのは明らかだろう。
大統領の持論は昨年8つの世界の紛争の解決を調停し、ノーベル平和賞を受賞しないのはおかしいというものだ。だが「平和の大統領」を誇示した直後には、グリーンランドやパナマ、キューバを脅し、今回はイラン攻撃に踏み切る「戦争の大統領」になった。支離滅裂とも思われる言動は大統領の判断力に大きな疑問を呈している。
大統領は攻撃の目標がイスラム聖職者を頂点とする体制転換だと明確にし、民衆に「蜂起」を呼び掛けた。だが、武器も持たない国民に何ができるというのか。
地上部隊を派遣せずに政権を転覆するのは至難の業だ。大統領の甘言に踊らされた国民が治安部隊に虐殺されることだけは避けなければならない。
