生産性の伸びが低いのは投資が伸びなかったから
では、なぜ日本の一人当たりGDPの成長率、生産性の伸びが低かったのか。主な理由は投資の停滞だ。
図5は主要国の一人当たり実質投資を示している。日本の投資水準は1990年代までは高かったものの、その後減少してしまった。投資がなければ、企業は生産性を向上させることができない。
なぜ投資が停滞したのか。その理由として、デフレや、円高で輸出が激減し資本コストの高さに投資意欲がなくなったこと、生産性の低い企業の新陳代謝を促す構造改革が遅れたなど、いくらでも理由を上げることができるだろう。筆者は、重要な理由の一つは、日本企業の規模が小さいことだと考える。
例えば、日本製の牡蠣の殻むき機械は1時間あたり5000~6000枚の牡蠣殻を剥くことができる。しかし、多くの日本の牡蠣養殖会社は規模が小さすぎて、そのような機械を導入することができない。
機械を導入すれば、非常に短時間で作業が終わり、後は機械を遊ばせておくことになってしまう。機械を導入する代わりに、外国人労働者を雇用して、牡蠣の殻むきをさせている。
彼らの作業量は1人1時間あたり500~600枚程度である。その結果、1950年代から現在に至るまで、牡蠣殻剥きの労働生産性はまったく上昇していない。
同じことは農業機械でも言える。ぶどうなどの果物を収穫する機械はある。しかし、これも生産性が高すぎて、小さな果樹園ではあっという間に仕事が終わってしまう。規模が拡大すればこれらの機械が導入できるようになり、生産性は飛躍的に上昇する。
問題は人口ではない。1人当たりの生産性である。そのためには、企業規模が大きくなることが必要だ。
そう考えると、なぜ多くの人が企業の事業承継が大事だというのか理解できない。もし企業が利益を上げているなら、事業承継したい人はいくらでも出てくるだろう。

