2026年3月6日(金)

Wedge REPORT

2026年3月6日

保安林指定への反発

 このような強力な保安林については、一般的には森林所有者からは快く思われていない。ふつうに林業を行う上でも、伐採面積や伐採方法が規制されるし、許可や届け出などの手続きも面倒である。そのため固定資産税の優遇措置や造林補助金などの嵩上げ措置もあって、それをうまく利用している林業経営者もいるが、一般的に私権を制限されることは感情的に面白くない。

 民有林とは逆に、国有林では約9割が保安林である。比較的山奥に位置する国有林だから、当然ともいえる。

 国有林野事業が独立採算制で赤字経営に苦しんでいた時、一般会計の造林費(民間の造林補助金に相当)を増額させるために、保安林の指定を一気に加速させた経緯がある。規制が強化されて森林施業もやりにくくなるのだが、予算の増加には代えられない。今にして思えば怪我の功名で、公共性の高い転用しかできなくなったので、国有林の蚕食防止には絶大な効果を発揮するだろう。

 かつては国有林を利用した開発案件があると、決まって国会議員の口利きがあったものである。だからと言って理由のないものまで無暗に開発させるわけではないが、保安林であると告げると大抵は取り下げた。保安林の解除は開発側にとって高いハードルだったのだ。

熱海での土石流災害の教訓

 2021年7月に静岡県熱海市伊豆山で起きた土石流災害の恐ろしさを記憶にとどめている読者も多いだろう。急斜面の谷間を流れる逢初川(あいぞめがわ)両岸にあった建物や家々がどす黒い土石流をもろに被って、破壊され流されていく光景が何度も茶の間に放映されて、全国に大きなショックが広がった。28人が死亡し、136棟の建物が被災した。

静岡県熱海市で21年7月に発生した豪雨による土砂崩れ(Abaca/アフロ)

 逢初川上流にあった違法な盛土(もりど)が崩壊して土石流となったそうだが、これは盛土ではなく、他所で余った土を置いた土捨場(どすてば)と呼ばれるものである。土捨場では土木用語としていかにもイメージが悪いので、残土処理場と呼ばれるようになった。

 盛土は土木構造物なので、地山(じやま)との接合をしっかりとして、均一な材料で十分に圧力や振動をかけて平らに押し固める締固めをするなど、堅固なつくりで、一般的にはその上には建築物をのせたり、住宅地としたり、道路を通したりする。

 これに対して、残土処理場は、土留め(どどめ)を設置したり、転圧はするけれども、盛土のような強度はなく、その上に施設を載せるなどは論外である。残土処理場へ搬入する土石は、廃棄するものなので均質性はなく、樹根や建築廃材などの異物を混入させる禁止行為が行われることも多かった。

 筆者が国有林で土地の売払いとか貸付けを担当していたころ、土捨場への利用は対象とするなと言われていた。雨が降り水分を含むと崩れやすいので、危険視されていたのである。

 そのような残土処理場の真下に市街地があること、急勾配の渓流の上部に置かれること自体が恐ろしいことである。頭の上に岩を吊るして寝ているようなものだ。


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