目的によって違う保安林の種類
森林は、私たちの生活に様々な効用をもたらしてくれる。山地に降った雨を蓄えて徐々に流す。森林のおかげで孔隙の多い林地はスポンジに例えられる。
洪水を緩和して貯めた水を常時少しずつ流出させ、いつでも川の水が涸れないのは森林のおかげである。これが水源涵養(かんよう)機能で、すべての森林がもつ普遍的なものだから、保安林においても4分の3が水源かん保安林となっている。実に国土の4分の1である。
2番目に多いのが、土砂流出防備保安林で先ほど述べた通り、山地災害から私たちを守ってくれる。
以上の2種類で保安林全体の9割を超す。
保安林の種類は全部で17ある。①水源かん養、②土砂流出防備、③土砂崩壊防備、④飛砂防備、⑤防風、⑥水害防備、⑦潮害防備、⑧干害防備、⑨防雪、⑩防霧、⑪なだれ防止、⑫落石防止、⑬防火、⑭魚つき、⑮航行目標、⑯保健、⑰風致と多彩で、森林のはたらきの多様性を物語っているではないか。
森林法が創設された明治時代からあるものが多く、現在のように根拠が厳密(科学的)に証明されていなくても、人々の経験を根拠に設けられたものもあって、当時の人々と森林の距離の近さを感じずにはいられない。災害の防止に留まらず、漁場の保全、ランドマーク、国民の健康、名所旧跡の風致の維持など文化的な面にまで及ぶ雑多なところが素晴らしい。
これらの諸機能は保安林やその他すべての森林に多かれ少なかれ備わったものであることに留意してもらいたい。これらの機能を複合的に発揮する森林の素晴らしさをないがしろにしてはならない。
最後に、変わり種の保安林を紹介しよう。
まず、魚つき保安林。水面に森陰をつくり、水質を保全し、水生生物の餌となる昆虫や植物を供給する。相模湾に突き出している真鶴岬周辺は良好な漁場で、漁港もある。
次は航行目標保安林。讃岐富士とも呼ばれる円錐状の優美な山で、瀬戸内海を航行する船からよく見える。この山の山頂部分が航行目標保安林になっている。
保健保安林。西表島の西部を流れる浦内川河口付近のマングローブ林である。景観を保持し、自然にふれあう憩いの場として、保健やレクレーションに活用するため指定されたとあった。この近くから川のぼりのクルーズ船が発着し、カヌーの体験もできる。
最後は風致保安林。京都の嵐山、渡月橋の借景として春は桜、秋は紅葉の名所である。

