2026年3月10日(火)

勝負の分かれ目

2026年3月10日

 羽生さんは白い衣装に身を包み、まるで最もまばゆい光を放つ“星”が躍り出すように、優しい音楽に調和し、氷上を舞い始めた。

羽生さんを包んだ“満天の星空”(ⓒnottestellata2026)

 4年連続4度目となるショーの幕開けだ。

 羽生さんの思いに、今年も無良崇人さん、田中刑事さん、鈴木明子さん、宮原知子さん、本郷理華さんをはじめ、海外からもハビエル・フェルナンデスさん、ジェイソン・ブラウンさんら、東北にゆかりがあったり、羽生さんと同時期に競技スケートの世界で活躍したりした多くの名スケーターが集った。

 それぞれが思いを込めた演技をつないでいく。そして、前半の最後を飾ったのは、羽生さん自らが振り付けも担った「Happy End」だった。

「復興」の中に残る「爪痕」

 表現に込めた思いは壮絶だった。

 「ひたすらに、とても苦しいという感じです。僕自身が持っているプログラムの一つで『天と地のレクイエム』という楽曲があります。こちらのプログラムは、震災に直接、気持ちを寄せて、当時の瓦礫の道であったり、あとは(震災当時の)空港の周りの車、瓦礫がいっぱい積んであるような道を、見渡している光景を表現しながら、そこに一つの魂が……という感じで思っていましたが、今回は、何か自分自身の体がむしばまれていったりとか」

 そんな心境に至ったのには理由がある。

 「坂本龍一さんの曲なので。この曲を書いた当初が、ずっと病に蝕まれていた頃だったとお聞きしていたこともあります。また、震災の傷や、被災地、宮城県、仙台もそうですが、ちょっとずつ、ちょっとずつ復興は間違いなく進んでいますが、傷跡もちょっとずつ残っています。僕自身が(練習拠点の)アイスリンク仙台で滑る時に目にする壁の傷や、補修はされているけれども、見える傷もあります。そんな傷を少しずつ感じながら。それにまたむしばまれながら、苦しんでいる自分もいます」

震災への壮絶な思いを込めて舞った(ⓒnottestellata2026)

 羽生さんの繊細な心は、作曲した坂本さんの心境に寄り添い、「復興」という鎧の内に消えることなく残された”震災の爪痕“に、15年の月日が流れたとしても、敏感であり続けていることがうかがえた。


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