2026年3月11日(水)

トランプ2.0

2026年3月11日

 いずれにしても、2003年当時、G.W.ブッシュ共和党大統領が「9/11テロ」を受けイラク戦争に踏み切った直後の世論調査支持率は一時、民主、共和両党支持者合わせ80%を超えていたのと比較しても、今回のイラン攻撃の場合、当初から「反対」が「賛成」を上回るという異常な事態になっていることは間違いない。

 しかも、当時のイラク戦争についても、ブッシュ政権は直後に大規模攻撃でサダム・フセイン政権打倒に成功したものの、その後も、温存されたイラク国内反乱分子や反米勢力の鎮圧にてこずり、戦争開始から4年後の07年には「混乱収拾」目的で大統領が新たに2万5000人もの米軍投入を余儀なくされたため、米国内でも戦争の長期化に対する批判や厭戦気分が一段と高まっていった。

 そしてその結果として、08年の米大統領選で共和党は、バラク・オバマ民主党政権の誕生を許す苦い経験を味わっている。

ベネズエラ攻撃とは大きく異なる事情

 今回のイラン戦争の場合も、米軍は最高指導者ハメネイ師ほか政権中枢の高職者多数の殺害に成功したものの、政権転覆や親米政権樹立には至っておらず、ホワイハウスは明確な「出口戦略」を未だに示していない。

 この点に関連して、トランプ大統領は去る5日、米メディアとのインタビューで、先の対ベネズエラ軍事作戦で独裁政権を打倒し、その後誕生した新政権との関係修復に成功していることに言及、今回のイラン戦争についても「ベネズエラ・モデル」を目指していることを明らかにした。

 しかし、大統領および側近たちが、もし作戦面でイランとベネズエラを同一視しているとしたら、それはとんでもない誤解だ。イランは国の規模、経済力、軍事力、政治体質など多くの面でベネズエラと異なる。

 9100万人の人口を擁するイランは、天然ガス埋蔵量世界2位、原油世界4位を誇り、その他の食料など天然資源にもめぐまれているため、治安も比較的安定している。政情も、一部不満勢力による反政府デモや集会の動きがあるものの、政府による監視・締め付けが徹底しているため、統治体制を揺るがす事態には至っていない。

 兵力は、陸・海・空軍から構成される国軍「イラン・イスラム共和国軍」61万人のほか、エリート軍として知られる「革命防衛隊」推定19万~40万人、さらに準軍事組織として「人民後備軍」が存在し、その規模は2000万人前後といわれる。

 これに対し、ベネズエラは人口2600万人、石油埋蔵量こそ世界一ながら、経済危機と政治混乱で超インフレを招き、国民生活は悲惨な状況が続いてきた。治安は極めて悪く、多くの国民が“難民化”していると伝えられる。軍事力は、正規軍12万人だが、経済危機により装備の劣化、兵員の訓練不足、低賃金による士気の低下などが懸念されてきた。

 去る1月初め、米軍侵攻の際も、軍は全くなすすべもなく、ニコラス・マドゥロ大統領夫妻の身柄をあっさり拘束され、米国に連行されるという醜態をさらしたのも、何ら驚くに当たらない。

 しかし、今回のイラン攻撃の場合、米国・イスラエル軍は空爆で最高指導者ハメネイ師殺害に成功したものの、攻撃開始から1週間を過ぎても、イランの体制転換や戦争終結のめどは全く立っていない。


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