人流に関する状況
交通インフラの復興環境は整ったと考えられる。しかし、人流を見ると、福島県沿岸部は復興したとは言い切れない面もある。鉄道を通じた人流を知るため、JR東日本公表の「路線別ご利用状況」から1日当たりの路線別平均通過人数を見る。
これによれば、東北新幹線(東京~新青森)の利用者は震災前の10年度は1日約5.2万人であったものが、24年度には5.7万人と、震災前を超える水準となっている。しかし、常磐線(日暮里~岩沼(宮城県))は10年度の約6.7万人が24年度は5.8万人へと被災前に届いてはいない。
このうち、常磐線の福島県内(いわき~原ノ町)を取り出すと、被災前の10年が1日平均通過人数3592人であったものが、24年度は約半分の1792人に減少している。沿線住民の減少が大きく影響していると考えられる。
15年間の人口数の比較
常磐線の福島県内区間の利用者数が回復していない要因を知るため、被災地3県で震災前の10年の住民基本台帳ベースでの市町村の住民数と直近の25年の住民数を比較する。図6を見ると、東北地方の拠点としての政令指定都市、仙台のある宮城県では0.937とかなりの回復となっている。岩手県は被災地3県中最も低く0.823で2割近い人口減少となっている。そして福島県も0.834とやはり2割に近い人口減少がみられている。このうち、南相馬市、富岡町、大熊町、双葉町、浪江町、葛尾村、飯舘村の帰還困難区域を含む市町村に限ってみると、人口減少率は0.765と25%に近づく減少率である。
帰還困難区域が存在することで、実際に「住むことができない」という制約があり、居住人口数が減少することは当然である。しかし、「住民基本台帳」は住民票の登録という書類の上での住所であるから、一時的に他の地区に避難している場合には、やがて故郷に帰還する予定で住民票の登録を残しておくことも考えられる。帰宅困難区域での人口減少は25%を超えている可能性も考えられる。
人口数と居住者数
住民票は残していても現実の生活の拠点は市町村外に移している世帯の可能性について、復興庁「産業復興事例集」(福島県15市町村の現況)では、避難指示の出された15市町村について23年8月から9月時点での、登録上の人口数と実際の居住者数を示している。帰還困難区域を含む7市町村のうち、南相馬市を除く6町村について人口数と居住者数を見る。
