2026年3月11日(水)

都市vs地方 

2026年3月11日

 図7を見ると、居住者数が人口数の30%程度からそれ以下の割合となっている自治体があり、人口数と居住の乖離があることが分かる。なお、南相馬市は人口数5万6620人に対し居住者は5万3710人とされ両者の乖離は小さかった。

 原発被災地の住民は今後の居住に関してどのような意向を持っているのであろうか。復興庁・各町村・福島県が15年から22年に共同で実施した「原子力被災自治体における住民意向調査」によれば、帰還困難区域が多く含まれる町村(双葉町、大熊町、富岡町、浪江町)では「戻らない」という回答が50%以上(回答当時)となっている。ここに「戻りたくても」立ち入り禁止制限で「戻れない」。このために「戻らないで生活の拠点を確保しなければならない」という住民の直面する困難さが表れているといえる。

長引く復旧と今後の問題

 東日本大震災発災から15年が経過し、岩手、宮城の復興庁は一定の役割を果たしたとして、閉じられることとなった。実際、社会インフラ関係のハードウェアの復旧・復興は進んだといえる。しかし、鉄道利用人流や居住者数の面から見ると、福島県第1原子力発電の被災地では、まだまだ「復興」というレベルまでに達していない面が残されている。

 最後に、復旧が長引くことによって心配される事柄をまとめておきたい。福島県沿岸部の社会的復興は、帰還困難区域の解除が進むかにかかる部分が大きい。帰還困難区域の解除にさらなる時間を要すれば、ますます他地域に生活拠点を移してしまう住民が増え、人口減少が進むことが心配される。

 次に、コミュニティの力が喪失されてしまう問題もあげられる。これは橋や道路のような社会資本とは異なり、支えあう地域の力や地域の文化・伝統という意味での「社会資本」(ソーシャルキャピタル)の喪失の問題である。

 帰宅困難区域の解除のためには、その地区の放射線量が安全に住める基準値以下となる「除染作業」を進めることが必要である。除染作業は放射線の降り注いだ土壌表面を削り取るほか、建物・道路の洗浄、放射線の溜まりやすい落ち葉や枝木の除去という作業、そしてこれらを回収・密封・保管する一連の作業である。薬剤等の散布で一気に除染できるわけではなく、1つひとつの積み重ねという膨大な作業を進めていく必要がある。

 除染によって発生した除染廃棄物は「中間貯蔵施設」(福島県大熊町・双葉町)にいったん保管されている。その後、45年までに全国の理解を得て福島県外に移送される計画である。11年に発生した大震災から20年間の31年までは復興庁を継続し、さらに34年後の45年までに除染廃棄物の保管の問題を解決しなければならないことになる。

 東日本大震災の被害とその復興の問題は、岩手県、宮城県の被災者支援も継続しながら、福島県の原発事故の被災自治体の問題に解決の努力が注入されていくことになる。しかし、それは福島県だけのローカルな問題ではなく、除染廃棄物の最終保管など日本全土でどのようにその復興を支えていくかという「新しい絆」の問題を考えさせられる。

 政府は先ごろ「防災庁」の設置を閣議決定した。頻発する災害に対し「復興」から1歩先んじて「防災」する発想に踏み出してきている。東日本大震災をはじめとしてこれまでの多くの災害からの経験や学びが今後の日本の人と社会を災害から守りぬける仕組みに活かされてほしいものである。

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