2026年3月17日(火)

世界の記述

2026年3月17日

 確認しておくと、現在、イランは大陸間弾道ミサイルを有していないため、米国本土がイラン領内から直接のミサイル攻撃を受けることはない。他方でイスラエルはイランのミサイル射程圏内に位置していることもあり、イランの核兵器保有、ミサイル・ドローン攻撃、代理勢力を通じた不安定化工作を「実存的な脅威」と捉えている。イスラエルのネタニヤフ首相の意向が、今後の戦局を大きく左右することになる。

イラン体制指導部の動き

 一方のイランは、「イスラム法学者による統治」の下、抑圧への抵抗と被抑圧民の救済をいわば国是とし、米・イスラエルの暴挙を理不尽なものとみなし、徹底抗戦の構えをみせている。新最高指導者として世襲でモジタバが選出されたことも、従来の反米路線を踏襲する立場の表明と受け止めることができよう。

 モジタバは、1969年生まれの56歳で、本格的にイスラム法学の勉強を始めたのは比較的遅い年齢だったといわれる。イラン・イラク戦争時(1980~88年)に革命防衛隊情報機構との関係を築いたとされ、今でも同隊と近いとされる。

 これまで政治の世界で要職を担ったことはなく、その政治的手腕は未知数である。原因は不明だが、最高指導者就任以降、現時点まで表舞台に姿を現していない。3月12日付声明も、イラン国営テレビのアナウンサーによって読み上げられた。

 当面、モジタバが革命防衛隊を代弁するような形で、「お隠れ」状態のまま国を統治する可能性はあるだろう。

イラン国民は現状をどう捉えているのか

 こうした状況の中、注目されるのがイラン国民の動向である。近年では、2022年秋に始まったヒジャブ抗議デモ、25年12月末に始まった全国での反体制デモの拡大にみられたように、イランでは多くの国民が現体制に不満を持っていると考えられてきた。開戦後、その実態はどうなのだろうか?

 まずもって、イランは多様性に富む国であるがゆえに、「イラン国民」と一般化して描くことに大きな困難が伴うことに留意する必要がある。民族面だけをみても、ペルシャ人、アゼリ人、クルド人、バルーチ人、アラブ人、ロル人、トルクメン人等々、数多くの民族が暮らしている。政治的信条、思想、宗教・宗派の違い、都市と地方の格差、異なる教育水準なども踏まえれば、安易に一括りにできない多様さがあることをよく理解しなければならない。

 それを踏まえた上で、79年2月11日のイラン革命から時を経て、多くのイラン国民が私生活に宗教的ドクトリンを以て介入する体制に不満を蓄積させてきたことは事実である。もとより、88年に行われた政治犯の大粛清(検証不能だが、数千人が処刑されたともいわれる)にみられたように、人権侵害、抗議デモの暴力的鎮圧、表現の自由の厳しい制限などは長年大きな問題とされてきた。このため、革命以降、イランを離れて海外で暮らす在外イラン人も多い。

 現状、イラン体制の岩盤支持層は概ね2割程度とみられる。24年7月5日に行われた大統領選挙決選投票では、投票率約50%の中で、保守派のジャリリ候補は44%しか得票できなかった。多くのイラン国民は政治不信から、第1回投票(6月28日)をボイコットし、決選投票では改革派のペゼシュキアン候補(現大統領)に票を投じたのである。

 要するに、保守派は投票率50%の選挙で過半数に達する票を集めることができなかった。有権者全体の2割程度にまでしか影響力を及ぼせなかったということになる。


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