2026年3月25日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2026年3月25日

 スターマーの議会声明に「トランプ大統領は当初の攻撃に加わらないという我々の決定に不同意を表明した」とあるが、米国は英国にイランに対する空爆に加わることまでも要請したのかは判然としない。基地使用の拒否はイラン攻撃の合法性に対する重大な疑問もあってのことに違いない。

 しかし、その後、イランの反撃が湾岸諸国に及び、英国民の生命にも重大な影響が迫るに至り、英国は方針を修正し、二つの決定を行った。議会声明だけでは解りづらいが、決定は、第一に、英国自身の利益を守るための個別的自衛権の発動に加えて、湾岸諸国の要請に応じ集団的自衛権を行使して紛争に巻き込まれていなかった諸国を標的とするドローンまたはミサイルを迎撃するための軍事アセットをこの地域に展開すること。第二に、米国の要請に応じ、湾岸諸国に対する攻撃に関与したイランのミサイル施設に対する特定の限定的な防御行動のために米軍が英国の基地を使用することを認めることである。

曖昧な戦争への加担と湾岸諸国を守る行動

 しかし難点がある。英軍は湾岸諸国を標的とするミサイルに限り迎撃するというが、バーレーンの米国第五艦隊司令部に向かっているミサイルは迎撃するのか。湾岸諸国に対する攻撃に関与したイランのミサイル施設に対する攻撃に限り米軍に英国の基地の使用を認めるというが、いずれの施設も米国とイスラエルおよび湾岸諸国の双方を攻撃対象とするのではないか。

 結局、湾岸諸国を守る英国の努力はイランの反撃努力を阻害し、結果として米国とイスラエルを支援する効果を持つ可能性がある。換言すれば、不法な戦争に加担することと、湾岸諸国を守る合法的な行動との境界線は実際問題として曖昧になる。

 なお、2月28日、英仏独の3カ国首脳は共同声明を発出したが、米国とイスラエルの武力行使には沈黙する一方、自国民に対する暴力と圧迫、核・ミサイル開発、テロなど、イランの政権の悪質な性格に言及してイランによる報復攻撃を非難する均衡を欠いた内容である。

 マクロンは、両国の攻撃は「国際法の外側」で行われたと言い、「承認出来ない」と述べたが、明確な批判は控えている。3カ国には米国とイスラエルに対する批判を避ける逃げ口をイランの政権の性格に求める傾向が顕著である。カナダも豪州も米国に対する支持を表明しているが、この傾向は同様である。

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