もっとも、極めて悪質な外側のキャラクター批判が続く中でVTuber活動を続けることが、「中の人」にとって大きな精神的負担となることは容易に想像されます。メタバースにおける「ファントムセンス*6」の問題のように、アバターと人格が一体化してくる中で、どこまでを法的な線引きにするかは今後の課題でしょう。
AIの普及で二次創作の著作権はどう変わるのか?
――今後、AIによる創作の普及に伴って、二次創作をめぐる著作権の考え方はどのように変化していくと考えますか?
AI普及により二次創作の制作コストが下がり、より多くの人が参加できるようになっています。法的な観点から言えば、人間が自ら制作する二次創作も、AIによって制作される二次創作も、著作権侵害か否かを判断する基準自体に基本的な違いはないでしょう。いずれにしても、創作・出力された作品が既存のキャラクターと類似しているかがポイントとなります。
ただし、AIで生成した二次創作に著作権が発生するか、という点では違いがあります。現在の考え方では、純粋にAIが生成し、人間の手が入っていない作品には著作物性がないとされています。
興味深いのは、ファン文化としての二次創作と、AI生成による二次創作の受け止められ方の違いです。長年、人間による二次創作は「作品への愛」や「ファン活動」として一定の理解を得てきました。一方、AI生成による二次創作に対しては、権利者だけでなくファンからも抵抗感が示されることがあります。
こうした状況を受け、一部の権利者はガイドラインでAI生成に関するルールを設けています。例えば「AI生成作品と人間の作品で投稿ハッシュタグを分ける」「AI使用の表示を求める」などの対応です。今後、こうしたAI生成に関するルールを設定するガイドラインがさらに増えていきそうです。
ただし、AIをあくまで創作ツールとして捉える見方もあるでしょう。AIによる制作の効率化もそうですし、AIとの対話の中で新たなストーリーの発想を得ることは、創作の可能性を広げるものとも言えます。
日本の二次創作文化は、法的には微妙な位置づけながらも発展してきました。著作権侵害となり得る行為でありながら、権利者側の「お目こぼし」によって、最近は「ガイドライン」によって、一定の範囲内で認められてきました。そうしたことから、世間では「二次創作は法的にはグレー」と一言で片付けられてしまうこともありがちです。しかし、法的にどのような線引きがなされているかを知ることも、原作者側、二次創作者側にとって必要なことに思われます。
*6 ファントムセンス VRやメタバースでアバターを通じて活動する際に、物理的には存在しないはずの感覚(触覚や痛みなど)を感じる現象。アバターと人格の一体化が進んでいることを示す事例として議論されている。
