2026年4月9日(木)

戦災樹木を巡る旅

2026年4月9日

見つけた瞬間「待っていてくれたのか!」

 今回、東京都美術館を通じて、田窪恭治さんと、当時この展覧会を担当した学芸員の田村麗恵さんにコメントをもらうができた。まず、「木と再生」というテーマを据えた理由について、学芸員の田村さんは次のように振り返る。

 「この企画構想を立ち上げた当時は、東日本大震災から5年という復興の途次にあり、被災地のことを意識せずにはいられませんでした。一方で美術館の開館90周年という絶妙な節目の年に、祝祭的な内容が相応しいのか逡巡する中で、『再生』が展覧会のテーマに浮かび上がりました」

 そして被災イチョウとの〝出会い〟は偶然だったという。

 「田窪恭治さんは木や廃材、そして人々から忘れられた風景を再生させ、芸術へと転換させることで知られるアーティストです。一緒に美術館の内外をリサーチする中で、偶然、焼けイチョウに出会いました」(田村さん)

 田窪さんの代表作の一つである「林檎の礼拝堂」は、フランス・ノルマンディ地方で廃墟寸前だったサン・ヴィゴール・ド・ミュー礼拝堂の再生プロジェクトとして知られる。フランスに移住し、11年がかりで取り組み、地元の人々に親しまれる「林檎の礼拝堂」として蘇らせた。国内では、香川県琴平町の金刀比羅宮「こんぴらさん」の再生プロジェクトでも注目を集め、現在も全国各地で風景芸術を生み出している。

 田窪さんは、初めて被災イチョウを見た時の感動を次のように語る。

 「私は『木々との対話──再生をめぐる5つの風景』というタイトルが決め手となり、この展覧会へ参加しました。美術館への私の条件は、新作を作らせてもらうことでした。そして新作のヒントを探すため、美術館の内外を隈なく探すうちに、美術館裏側の作品搬入口の奥にひっそりと、しかし、しっかりと立っている被災樹木の大イチョウを見つけました。その瞬間思わず私は『待っていてくれたのか!』と心の中で叫びました」


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