2026年3月31日(火)

日本の縮充化

2026年3月31日

 美咲町は、「賢く縮む」という目標に向け、必要な支援は惜しまない。小中学生への通学バスの往来もその一つで、通学のために1日18路線を運行している。66歳以上の町民(26年度)や、妊婦などを対象に、町内でのタクシーを最大1000円までの個人負担で利用できるなど、安心して暮らすことができるまちづくりを行っている。

 「柵原地区はかつて東洋一の鉱山がある町でした。ところが、閉山後は人口が減少し、活気が失われていきました。それでもこの町を維持したいという思いがあります」

 07年に趣味のブルーベリー栽培から美咲ブルーファーム寒竹を起こした、前出の小坂さんの父・寒竹昭則さんは、懐かしみながらこう語った。

 21年、美咲ブルーファーム寒竹は、地域資源と観光などを組み合わせる「6次産業化で未来を拓く」プロジェクトに参加して、美咲町の魅力を伝える。夏場に行われるブルーベリー狩りには、美咲町民はもちろん、倉敷市や兵庫県から年間300人ほどが来園し、家族連れでにぎわう。

左から、寒竹とよ子さん、小坂祐子さん、寒竹昭則さん

 美咲町は、町を13に分けた小規模多機能自治も推進する。住民が町のことを自分ごと化して考えるあり方を目指して、ハード・ソフト両面から「まちのあり方をひとのあり方にダウンサイジング」する施策を進める。「負の遺産」を残さないために、青野さんは未来を見つめる。

 「20年後の町の人口は8000人になる試算です。公共施設の集約も大変ですが、これからはインフラの老朽化にどう対応するかという問題もあります。いまだに『縮む』ことに対して、ネガティブな印象を持たれることもあります。何もしないという選択もありますが、子どもたちに過度な負担を残さないためにも『賢く縮む』ことが大切です」

注目される「縮」の部分
伝えていきたい「充」とは?

 岡山県との県境にあり、江戸時代には二つの街道が重なり合う交通の要衝として栄えた兵庫県佐用町。

 現在も岡山県津山市や鳥取県、兵庫県姫路市などにもアクセスが良く、1万4000人が住む。

 「05年の旧4町合併以降、施設の合併や小規模多機能自治に取り組んできたのですが、23年度、前町長の時に、人口減少への適応について名称をつけようと、『縮充』という言葉を提唱しているコミュニティデザイナーの山崎亮さん(編集部注・パート1筆者)にご了解をいただき、『縮充』を打ち出しました」

 そう語るのは、JR佐用駅前にある佐用商店街で生まれ育った、同町企画防災課まちづくり企画室室長の谷本美沙さんである。

 町長の江見秀樹さんも語る。

昨年11月に着任した、佐用町長の江見秀樹さん

 「おかげさまで、『縮充』という考え方は住民の方々に認知されてきました。ただ、『佐用町は、未来を諦めているのか?』と捉える人が依然として多いことも事実です。今後は、自分たちが暮らしやすいまちづくりを目指していくという『充』の部分を伝えていきたいですね」

 「縮充」という言葉を見た時、目につきやすいのはどうしても「縮」の方だ。谷本さんは言う。

 「佐用町の『縮充』への受け止め方は、世代によって異なります。40代以下の方々には納得いただけても、50~60代以上の方々からは『そんな悲しいこと言わないで』という反応もあります。多様な意見がある中で、まずは、住民の意識や意見もあわせて考えていかなければならないと思い、有識者や若者、役場など、老若男女合わせた話し合いを重ね、一つの方針をつくりました」


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