2026年3月31日(火)

日本の縮充化

2026年3月31日

 方針のパンフレット名は、「みんなで考える縮充のまちづくり」。今年7月には、山崎さんを招き、「縮充フォーラム2026」を開催する予定だ。「小さくても、少なくても、こころ豊かでしあわせと思える町の実現に向けて、山崎さんと住民の皆さんとの対話が、どんな未来を描き出すのか楽しみです」と、谷本さんは笑顔を見せた。

住民の対話が未来につながる
「みんなで」つくる町

 佐用商店街は現状、シャッターが閉められている店が多い。そんな中、あたたかい明かりが漏れるガラスの戸を開けると、木製の大きな机で高校生が談笑していた。18年にオープンした、泊まれるコワーキング・コバコWork&Campである。

左から、谷本美沙さん、神原麻里さん。あたたかい光のコバコWork&Campでは、雑貨販売や、イベントなども行われている

 コバコでコミュニケーターとして働く神原麻里さんは、広島県出身で結婚と同時に佐用町に住み始めた。現在は、コバコを介して、起業家支援や、佐用高校の学生との交流事業、女性の就業支援など、町のコミュニティーづくりに携わっている。

 子育て中の女性が集う「ほっこりカフェ」では、女性たちの本音を聞くことができた。

 「子育て中の女性は、母として子育ての集まりに参加する機会はありますが、一人の人間として雑談する機会は多くはありません。そのような女性たちのコミュニティーづくりをすることで、雑談から個人の悩みの話になり、前を向くきっかけや町の施策への提言など、次につなげることができるようになりました」

 谷本さんもコミュニティーの重要性について話す。

 「生活の悩みがあるときは、コバコのような民間企業から役場につながることもできます。役場と民間企業や地域団体など、住民との距離が近く、『みんなで』話すことができるのは、佐用町の魅力だと思います」

 佐用町の未来を語る上で欠かせない「みんなで」つくるという考え方。谷本さんはこう語った。

 「町の人と助け合い、訪れる人を受け入れ、ともに暮らしていくという佐用町の方針は、言い換えれば『かつての暮らし方への回帰』ということなのかもしれません。ただ、それは単なる懐古ではなく、過去と現在の良さを組み合わせ、融合させながら、最適なまちづくりを再構成していく試みでもあるのです」

 縮小しながらも新しい豊かさを見出していく─。そんな発想の転換こそが、現実に即した町のあり方を見つめ直す契機となる。美咲町と佐用町の取り組みは、私たちにそう教えてくれているのではないか。

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Wedge 2026年4月号より
縮む地方 膨らむ東京 日本の縮充化こうすれば実現できる
縮む地方 膨らむ東京 日本の縮充化こうすれば実現できる

「日本列島を、強く豊かに。」を掲げ、先の衆院選で高市早苗首相率いる自民党は圧勝した。信任を得たからにはその実現に向け、全力を挙げるべきであることは論を俟たない。一方で、見過ごしてはならないことがある。東京を筆頭に都市は膨らみ続ける一方で、地方では縮小が先行している現実だ。日本には、実に「多様」な地方があり、そこにしかない「営み」がある。その価値の上に、この国家が成り立っていることを忘れるべきではない。歴史的転換点にある中、「豊かさとは何か」を再定義し、「縮小」しながらも「充実」させる〝縮充化〟の実現に向けて新たな一歩を踏み出す時だ。


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