2026年3月31日(火)

World Energy Watch

2026年3月31日

 実際、イランは3月7日、自国内でテヘラン製油所やシャフラーン石油貯蔵施設、シャヒード・ドウラティ石油貯蔵施設、シャフル・レイ石油貯蔵施設、アグダシエ石油貯蔵施設、カラジの石油貯蔵施設への攻撃を受けた。その後、イランは湾岸各国の製油所や貯蔵タンクへの報復を活発化させた。

 また3月18日には、イラン最大のガス田である「サウスパールス・ガス田」に関連する港湾都市アサルーイエの陸上ガス施設がイスラエルの攻撃を受けた。これを受け、イランはカタールやUAEのガス関連施設への攻撃を一段と強めた。 

 イランにとって、ガス生産量の低下は経済面で死活的な問題となる。天然ガスは、原油増産のための再圧入に用いられる重要な資源であるだけでなく、国内の主力電源であるガス火力発電の燃料でもある。さらに、トルコやイラクなどへの輸出を通じて外貨を稼ぐ重要な収入源でもあるためである。

 第二の攻撃傾向として、米国企業が関与するエネルギー施設も標的に含まれている点が挙げられる。イランがサウスパールス・ガス田への攻撃後に報復対象として名指しした施設を見ると、サウジアラビアのサムレフ製油所にはエクソンモービル社、ジュバイル石油化学施設にはダウ・ケミカル社、カタールのメサイード石油化学施設にはシェブロン社、ラアス・ラファーン製油所にはエクソンモービル社、UAEのシャー・ガス田にはオキシデンタル・ペトロリアム社と、いずれも米国企業が関与している。

カタールでのLNG生産の停止

 湾岸諸国のエネルギー施設への攻撃で、最も深刻な被害が生じたのはカタールのLNG生産施設である。3月2日、国営カタールエナジーは、ラアス・ラファーン工業都市およびメサイード工業都市の操業施設が軍事攻撃を受けたことを受け、LNGと関連製品の生産停止を発表した。カタール国防省によれば、イランから発射されたドローン2機のうち、1機はラアス・ラファーン工業都市内の発電所を、もう1機はメサイード工業都市内の発電所に給水する貯水タンクを標的としていた。

 さらにイランは、3月18日から19日未明にかけてラアス・ラファーン工業都市へのミサイル攻撃を実施し、ラアス・ガスLNGプロジェクトの第4および第6生産設備が損傷した。両設備はいずれも、カタールエナジーと米エクソンモービルの合弁事業である。これにより、カタールのLNG輸出量の約17%に当たる年間1280万トン分の生産が失われ、年間の収益損失は200億ドルに上る見込みである。

 また、両設備の復旧には3~5年かかる見通しである。このため、中国、韓国、イタリア、ベルギーとのLNG長期契約についても、最大5年間にわたり不可抗力条項の適用を余儀なくされる可能性がある。

 14基あるLNG生産設備のうち2基が損傷したことで、カタールのLNG生産能力の長期的な低下は避けられない状況となった。同国のLNG年産能力は、現在の7700万トンから6420万トンまで落ち込む見通しだ。

 さらに、一連の攻撃により、カタールが2017年から進めてきたLNG増産計画の第1弾「ノースフィールド・イースト(NFE)」事業についても生産開始が26年後半から27年以降に遅れる見通しとなった。


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