2026年4月6日(月)

Wedge REPORT

2026年4月6日

 どのルートを使ったかは、防犯カメラなどの画像を調べればたぶん追跡できると思うのだが、奈良県側では数頭の群れで行動していて、大阪側で見つかったのは2頭だったので、生駒山地に残った個体もいる可能性が高い。

 生駒山地を通過できれば、大坂夏の陣の徳川軍よろしく大坂城まで一気呵成である。

自然に向き合う契機に

 余談みたいなことばかり書いたが、人間側は野生動物との間に境界をつくりたがるが、彼らにとってはそんなものはなく、与えられた環境にいかに適応して生きていくかが命をつなぐ要件なのだ。浸透圧みたいなもので、濃度の高い都市部に向けて、動物たちはどんどん浸透してくる。

 シカに限らず、すでに露払いの役を果たしたハクビシンから始まって、タヌキ、シカ、イノシシ、そしてクマ。東北地方ではカモシカは町中で普通に見られる。

 こうなることは、山や森での仕事を通じで早くから予想できた。何より野生動物と人間に基本的に発想に違いはない。人間に便利なところやものは彼らにとっても便利なのである。人間が山村から下ったように彼らも下るのだ。

 1つ忘れてはならないことは、増えすぎた野生動物によって森林の生態系が破壊される現実である。例えば食害で植生が単純化したり、樹木が枯れたりすると、山崩れを誘発する可能性さえある。都市民と野生動物の軋轢に目を奪われているうちに、山野が荒廃すれば大規模な水害さえ心配される。

シカの嫌いなミヤマシキミしか残っていない林床

 自然から収奪し続けた人間に対する自然のしっぺ返しが、今まさに始まろうとしている。経済的な進歩ばかりに囚われず、私たちの温床である自然に向き合う姿勢が何より求められている。

Facebookでフォロー Xでフォロー メルマガに登録
▲「Wedge ONLINE」の新着記事などをお届けしています。

新着記事

»もっと見る