コロナ禍で患者が激減した〝理由〟
ノロウイルスによる食中毒は過去10年以上にわたり国内の食中毒患者数で首位を続けており、2010年代半ばには年間1万人を超えることも珍しくなかった。これを一変させたのは新型コロナウイルスで、20年から22年のコロナ禍には2000~4000人と激減した。飲食店の営業自粛や人流抑制で外食する人が減ったこともあるが、最も大きな理由は国民全体が感染症対策として「徹底した手洗い」を習慣化したことにある。
ノロウイルスの主な感染経路は、調理者や食品にかかわった人の手指を介した食品の汚染。皮肉にもコロナ禍での衛生意識の向上が、ウイルス性食中毒の劇的な抑制につながったわけだ。
ノロウイルスは10~100個の少量でも体内で増殖し食中毒を起こす。東京都健康安全研究センターが、ノロに似たウイルスを混ぜた水溶液を2枚重ねのトイレットペーパーで拭き取る実験をしたところ、10枚重ねた計20枚の紙でも中指や小指からウイルスが検出された。つまり、いくら慎重にトイレットペーパーを重ねても、ノロウイルス感染者の排便後の手はウイルスで汚染されているといえる。
また、同センターの手洗い実験では、流水だけの15秒の手洗いでは約1万個のウイルスが残っていた。この手で手袋や作業着を触れば、どちらにもウイルスが付着することになる。同じ実験で、泡立てたせっけんで10秒もみ洗いした後に流水で15秒のすすぎを2回繰り返すことで、100万個のウイルスが数個まで減っていた。
野田さんは「感染症対策はすべて手洗いをしっかりすることが基本。一人ひとりが日常生活の中の衛生管理を徹底することがノロウイルスの拡大を抑えることにつながる。症状の有無にかかわらず、調理をしたり食品を扱ったりする人は、トイレの後や調理前に丁寧に手洗いをすることを習慣にしてほしい」と話している。
