2026年4月10日(金)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2026年4月10日

 インドネシアにとって対中関係とは、対大国外交なのである。翻って対日関係とは、同じミドルパワーとしての外交である。インドネシアから見た日本の存在意義とは、米中という超大国を越えるものではなく、しかし決して軽視する相手でもないものに変化していることを、我々は理解する必要がある。

ミドルパワー同士に求められる戦略的補完関係

 2024年、ジョコ政権の跡を継いだプラボウォ大統領も、前政権の基本的な外交姿勢を引き継いでいる。国軍エリートの出身であり、スハルト大統領の娘婿でもあった同氏は、硬軟合わせた対応によって念願であった大統領の座を獲得した。

 元来から強権的体質を持つ同氏は、国内政策では強引さが目立って批判を招いているものの、政権基盤は強力である。そして外交政策上では、大国間の勢力均衡の中で、独自のミドルパワーとして存在感を示すという方向性を継続し、全方位での外交を展開している。3月末から4月上旬にかけての日本と韓国への訪問は、これを補完・強化するものであった。

 だが先述したように、すでに日本とインドネシアは、20世紀後半のように「大国」である前者が「発展途上国」である後者をリードする、という関係にはない。また、こうした時代を支えてきた重層的な両国間の人脈も、構造自体が変容したことで新陳代謝が滞り、過去四半世紀の間で急速に細りつつある。ゆえに今日において、日本の朝野が明確に理解すべきは、インドネシアを同じミドルパワーとして認識し、厳しい大国間競争の中で「自らの生き残り」のために必要とされる、新たな戦略的補完関係を構築しなければならない、という現実である。

 その上で重要なのは、このミドルパワー同士の戦略的補完関係とは、あくまでも打算と功利に基づくものである、という利己性を持つことではなかろうか。鷹揚な同盟の形成・主導とは、大国のみに可能なものであって、日本のようなミドルパワーには許されない贅沢である。

 インドネシアには独自の前提条件と外交姿勢があり、彼らと中国の関係が象徴するように、その行動は自身の利益を最大化するための立ち回りである。逆説的には、あくまでも日本は自らの利益と生き残りのため、ミドルパワーとして持てる能力を用い、柔軟的な発想を磨きながら行動するべきである。

 こうした彼我の機微を理解した上で、日本はインドネシアと何を補完し、あるいは交換できるのかを見究め、今後の両国関係から実利を得ることで、それを総体的な外交力のなかに組み込んでゆく必要がある。

※本文内容は筆者の私見に基づくものであり、所属組織の見解を示すものではありません。

Facebookでフォロー Xでフォロー メルマガに登録
▲「Wedge ONLINE」の新着記事などをお届けしています。

新着記事

»もっと見る