台湾侵攻の可能性と今回の判決
本筋の台湾に議論を戻そう。習近平が27年までに人民解放軍が台湾侵攻を可能とする能力を準備すべしとの指示を出したことを指摘したデビッドソン海将の説明(21年)は、27年には中国の台湾侵攻が起こるとの予想、いわゆる「デビッドソン・ウィンドウ」として捻じ曲げられて伝搬した。しかし、そもそも、秋に共産党大会を控える27年にそのようなハイリスクな行動を取るとは考え難いことであり、地域の軍事バランスの悪化にもこだわらず、27年に台湾有事が発生すると考える向きは今や非常に限られている。
一方、新たなウィンドウとして登場したのは、台湾総統選と米国大統領選(日本でも参議院選挙)が行われる28年である。同年初の台湾総統選で仮に中国側が憎悪しているように見える頼清徳・現総統が再選されれば、これを奇貨として、米国が大統領選挙の最中で内政にかまけている間に中国が行動を起こすのではないか、という見方には一定の理がある。もちろん前提は、習近平が共産党大会を無事乗り切るということであり、それは、外見程簡単ではない可能性はある。
この文脈で、今回の判決の今後のインパクトをよく見ておく必要はあるだろう。本年は台湾統一地方選挙の年であるが、従来地方選では国民党が強く、ただでさえ現職への不満が民進党にマイナスに働く中で、結果は見えているだろう。
ただし、前回の統一地方選でも民進党は敗北を喫しているので、専門家によれば、それを上回る敗北はしようがなく、逆に1-2のポストを取り戻すのではないかとの見方もある。それでも、この結果が28年の総統選での各党の候補者選びに与える影響には要注目だ。
なお、この記事に出てくる台湾民衆党の黄国昌・現党首も、柯文哲同様、若者の間で大きな人気を誇るが、米国留学経験を持ち米国と近く、そもそも元々は「台湾独立」を主張していた人物であり、どちらに転んでも中国にとっては厳しい。

